ショートショートバトル 5KBのゴングショー第91戦勝者
セコム
いつからだろう、ぼくに嘘がわかるようになったのは。最初のころはみんなそうなの かと思っていた。いや、それくらい自然に嘘がわかったのだ。だから、ごく当たり前 のこととしてそのことを誰にも言わなかった。当たり前のことだとおもっていたか ら。でも、次第に僕が大人になっていくにつれてそれが自然ではないことに気がつい た。だから、よけいに誰にも言わないとおもった。 どういうふうに嘘がわかるのかって?口ではうまく説明しにくいんだけど、嘘を見た り聞いたりするとその真実の姿が、ヴィジョンっていうのかな?まぁ映像みたいな形 で見えるんだよ。 ほら、隣で女子高生がケータイでなにかいってる。「そんなことないよぅ。ミキが一 番かわいいてばぁ」・・・・・・・まぁ結構よくあることなんだけどね、彼女の鏡に 映ってる自分をうっとりみてる姿が目にうかぶよ。まるで「自分が一番」といわんば かりに。 学校の先生がいってることもそうだ。よく、「勉強すれば将来バラ色」みたいなこと いうだろ。そういうの聞くととても勉強してるのに苦労してるひとの姿がまた見える んだよね。だから、勉強する気もなかなか起きない。つまり、僕の成績も落第寸前っ てことさ。 ああ、あとニュースとかは絶対見ないね。ブッシュとか小泉とか、あいつらのいって ること9割9分9厘嘘だよ。もう、ヴィジョンと現実が混ざったんじゃないかってお もうくらい見えまくるからね。だから、ぼくはよく「そんなことも知らないのぉ、 ニュースみてんの?」って言われる。まぁしょうがないけどね。 でも、嘘が見えるからって悪いことばっかじゃないよ。人に騙されることは逆立ちし たってないし。それに本心できれいなこといってる人ってたまにいるんだよね。そう いう人ををみると、ぼくの方までうれしくなってくる。そういうときは生きてて良 かったっていうか、なんとなくプラス思考になるんだよね。 そんなかんじで日常生活おくってきたわけだけど、ある日僕は「マトリックス」とい う映画を見に行った。その映画は皆さんもご存じのように、「人類が生活している世 界は人類が機械に見せられてる夢で、現実の世界は機械が支配している。そこで主人 公が、人類を夢からおこそうとする」みたいなかんじの内容だったんだけど。 その日から僕はときどき日常がいまいちしっくりこないと思う時ができるようになっ た。まぁどうせ、映画の影響かなにか受けたのだろう。 そう思いながら過ごしていたある日、僕はベッドに横になって、なかなか寝付けない から考え事をしていた。そんなときってだいたいあまり良くない考えが思いつくんだ よね。ぼくの場合もまた然り。 僕の存在自体が嘘なのではないか? そう思った瞬間、ぼくの目の前には真っ暗な闇だけがみえるようになった。きっとこ れは永遠につづくのだろう。 でも、考えようによっちゃこういう見方もできないかい? 世界の存在自体が・・・・
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