気がつくと、砂浜だった。
嬉しくて小躍りしたくなったが、狭い瓶の中ではそうもいかない。……まったく、魔法が使えないと、波任せ海流任せで、方向すら選べやしない。
ちょうどいいことに、向こうから女が歩いてくるのが見えた。今回はついてる。この前なんか、三十年も洞窟の岩の下に挟まって、苔むしていたんだからな。
……よぉーし、こっちに来い。
この幸運を拾って、瓶の蓋を開けろ。
何でも願いを叶えてやるぜ。
…お前の魂と引き換えに。
女は瓶を手に取り、眺め回す。
「……悪魔?」
呟くのに、俺は心の中で答える。
『そうだよ』
女からは、他力本願の匂いがする。
間違っても、俺を『最後の希望』にして、自分で努力して夢をつかむタイプじゃない。そう、信心深いものや聖職者なんて、少しも怖くない。怖いのは、勤勉な努力家だ。
「らっきー」
旨そうな他力本願の匂いを漂わせながら、女は俺を鞄にしまった。……どんな願い
を言い出すかな、へへへ。
隣にランプ、下の棚に魔神の壺、上の棚に妖精の指輪……女は俺を魔法アイテムコレクターに売り渡し、目当ての大金を手に入れた。そしてコレクターって人種は、
「使ったりすると、価値が下がるからな」
てなことほざいて俺らを磨くだけなんだっ!!
持ち主が解放してくれなきゃ、何も出来ねーじゃねーか!
……これが、当世風の『幸運の拾い方』ってモンかね?
俺は溜め息をついた。
・終わり・
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