ショートショートバトル 5KBのゴングショー第235戦勝者
こいよ
「さては・・・」 と始まった彼の言葉に、心の中で、 「そうよん」 と言いつつ、 「はい?」 ととぼける。 怖い顔の彼は、近づいてくると、いつものように私の顔をはった。 痛い。 けど、「痛い!!」とか大げさに叫ばない。 黙ったまま睨む。するとドラマのようなので、彼も芝居がかってきて、 「なんだ、その目は!!」 と大げさにリアクション。 なんだか、最近はこの手順踏まなくてもいいじゃん、とかおもうんだけど、彼はそういうのが好きなので、まぁ、彼のことが好きだからつきあう。 というわけで、明日の朝、腫れた頬をどうしようとか、思ったりするけど、思ってみれば、明日は国民の祝日だった。 お祝いだから休みだ。 休日は人が多いので、私たちは部屋デートだ。 だから問題ない。 と思いつつプレイを続けていると、 「カット!!」 と彼が耳元で囁く。 「は?」 「もう一度、最初からいいかな」 と馬鹿なことを言うので、 「それはない」 と即答すると、 「じゃあ、止めた」 と子供みたいなことを言う。 困ったものだ。 消防車を呼ばないつもりなのだろうか? 彼は寝たばこがどんなに怖いものか、理解していない。 本当に寝息をたてて寝ている彼の背中に、ナイフを何度も突き立てる。 昔見た映画の殺人者のように。 すると、彼が激しく咳込む。喘息の発作を起こしたみたいだ。 慌ててナイフを引き抜いて、薬箱から彼の薬を取りだしてくると、もうスヤスヤとまるで子犬のようになっている。 とりあえず、枕元に水の入ったグラスと薬を置いてあげて、私も猫のように丸くなって寝ることにした。 |
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