ショートショートバトル 5KBのゴングショー第216戦勝者

「作家というもの」

木戸賃

作家と言うのは難儀な商売で、人様の話を拝聴し、それを再構築して、他のお客様に差し出すんだが・・・。
まぁそのうち、話をしてくれる人はいなくなり、そうなると、テレビばかり見て過ごすのだけれども、最近、テレビまで、わたしに話を聞かれたくない、そういうそぶりを見せるようになってきて、少し参っている。

もしかして、自分の家だと地デジとかで、補足されてしまうのがいけないのかな、とか思い、いわゆる一つのネットカフェ難民の仲間入りをしたのだが、会員制だったり(身分証明書の提示が必要だ)、クレジットカードを使うと補足されるはずなので、現金が消滅した世界では、どのみち逃げられない。

昔の作家はよかった。デジタルな補足機能がないので、ひなびた温泉街を放浪して大作を書き上げ、その温泉宿の仲居と仲良くなったりして。
しかたがない、時代が違うのだ。
でも、昔に比べればいいこともある。
漱石の時代にはカクテルはなかっただろう。
彼の泊まったという部屋を見学したことがある。
通りに面した部屋であり、廊下は襖。
もし面が割れていたら、すぐに見つかる。
いまは覆面作家もOKだ。
ネットで寄稿すれば、携帯電話があればいい。
電話なのに、投稿時のみ電源を入れる。
そうすれば、編集者からの催促も漱石時代と同様にかわせる。
なるほど、作家というものの本質はあまり変化がないようだ。
語りべも同じだったのだろうか?
吟遊詩人はスナフキンのように、村には住めなかった。
放浪していた。
人生は旅だ。
では、みんな作家だ。
サッカーが野球よりも流行るはずである。
ED時代に突入し、サッカーが流行し、野球の人気は(やや)減じられた。
男だけでする野球やゴルフは歌舞伎と同じ伝統芸能になっていくのだろうか?
閣下はどう思います?

「くわ!!」

閣下のご機嫌は斜め73度くらいのようだったので、わたしは執筆に戻った。

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