ショートショートバトル 5KBのゴングショー第164戦勝者
鏡 もち
あのさ、俺すげー怖い体験したんだよ。いや…いるんだなぁ、と思ってさぁ。 ……なにってお前……決まってんじゃん。 昨日、部屋の床で寝てたんだよ。そしたらベットの上から声がするわけ。 だれだぁ〜…お前はだれだぁ〜って……低い声でさ。 …最初、空耳だと思ったわけよ。いや、信じようとしなかったって表現の方がしっくり来るかもしれないな。 だから無視してベットに背中向けて、そのまま寝てたんだわ。 …おいっ、ど〜したんだよ。顔、青いぜ? 耳塞いだりすんなよな。ここからが本番だからよ。 それからしばらくしてさ…また、声がするんだ。さっきより少し大きくなって…。 出て行け〜…ここはワシの部屋だ…出ぇていけぇえぇ〜…ってな。 背後から、しかも突然のことだ。さすがにドキッとしたねぇ。 空耳にしても、寝言にしても出来すぎてるじゃねえか。俺は…まさかなぁ、と思った。 それでゆっくりとベットのほうに寝転がったんだよ。相手の様子、確かめようとしてさ。 そしたらっ、ベットの上からさぁ…すんごい形相で、俺のこと視てるんだよ。血の通ってないような、真っ白い顔したじいさんが…。 やべえっと思ってさ。俺、急いで部屋を飛び出たんだよ。壁すり抜けて、そのまま家も出て、遠くまで必死で逃げた。 いやー、いるんだなぁ。俺達のこと視えるやつって。 正直、死んで幽霊になるまで霊の存在さえ疑ってたもんだから、まさか俺達のこと視える、なんだっけ霊能力者? そんなもんが実在するなんて思ってもなかった。 今は言える、いるんだ……。もうあのじいさんの部屋にはいかねぇことにする…心臓にわりぃ。 うとうとしてちょっと寝床貸してもらってただけで、んな怒ることないっての、なあ? どう怖かった? ……だよなぁっ。お前も気ぃ付けたほうがいいぜ。じゃあっそろそろあそこ行こうぜ! どこってお前、銭湯の女湯覗きに決まってんじゃんっ! |
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