空が青い。
別に意味はないのだろう。
ただ青い。
それくらいシンプルでいられればどんなに楽しい毎日を送れることだろう。
屋上は最も好きな場所のひとつだ。
ここにいればそれだけで幸せになれる。
まるで別の世界にでも触れているみたいだ。
……すぐ隣から発せられたヒステリックな声で現実に引き戻される。
……ああ、そうだっけ。
「………ちょっと、聞いてる!? ユウイチくん!? 」
……ああ、そうだ、俺、恋愛相談されてたんだっけ。
今日は一人じゃなかったんだ。
「……ねえ、聞いてるの!? 怒るわよ!?」
「…聞いてるよ(もう怒ってるよ)…浅川さんはシンヤが好きだ、って話だろ?」
「ちょ、ちょっとそんな大きな声で…誰か聞いてるかも知れないじゃない…!」
「(俺が聞いてるって…カウントしないつもり?)…で、どうしようっての?」
「だからぁ……ユウイチくんさ、シンヤくんと結構仲良いじゃない?
……よく二人で一緒にいるのとか見かけるし……」
「まァ……ね」
「……好きな子…いるか、とか…聞いてきて欲しいの……お願い!」
一緒にいる……見かける…?
シンヤを見てたら俺が視界に入って来るってワケか。
確かにね。
「…何で?……好きなら好きって……言えばいいじゃん」
「怖いの…相手の気持ちが全然わかんないのって…すごい怖いんだから…」
「…他人の気持ちなんてわかるワケないじゃん」
「違うの! わかんないのはシンヤくんだけなの!」
「……それはやっぱり、好きになったから?」
「…そうだと思う」
「………へえ、じゃあ好きじゃないヤツならわかるんだ……」
彼女は何も反応しなかった。
好きでもないヤツには興味がないだけだろう?
そうヒニクってやるつもりが……口をついて出たのは、
最も意外で、……そして最もストレートな言葉だった。
「……じゃ浅川さんさァ、………俺が浅川さんのこと好きだって知ってた?」
「…えッ」
……彼女は顔を赤くして階段を駆け下りていった。
あれだけ元気があれば大丈夫だろう。
空が青い。
<Fin>
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