ショートショートバトル 5KBのゴングショー第83戦勝者

「機械」

shuto

その機械はA町に突然現れた。形は自動販売機のようでお金を入れるようなところと
取り出し口らしきものしかなかった。そして張り紙がただひとつ

「取り出し口に物を入れてください、それ相応のお金を出します」と書いてあった。

住民は気味が悪かったが誰かが試しに物を入れてみた。ウィーという音とともにCD
が中に入って行きお金を入れるところから千円が出てきた。住民はこれに驚き次々と
物を入れてお金を出してみた。そのたびにその機械はお金を出した。百円、千円、中
には十万円も出た品物もあった。そしてお金を入れても物はもどらなかった。

ある日その機械は突然と消えうせた。住民はあせりあたりを探してみたがどこにもな
い。それはその町のSという科学者が研究のために黙って持ち出したのだった。

Sは町でも有名なへんてこ科学者でこれまでにろくでもない発明をして何度も問題を
起こしてきた。しかしSも最初からへんてこだったわけではない。というのは最愛の
妻が一昨年他界してしまったのだ。彼が今発明に打ち込んでいるのも妻のいない寂し
さを紛らわすためかもしれない。しかし

「これはこの世のものではないかもしれないな。これを解明すればお金をいくらでも
出せるかも知れんぞ。そうすればワシは・・・」などといいながら機械を研究所に持
ち込んだ。今の彼の頭には妻のことは浮かんでいないようである。

研究所では助手が試験管を振って実験していた。博士が帰ったことに気がついたよう
である。

「あれ博士、なんですかそれは。」

と尋ねた。

「ふふふ、知りたいかね。これは今話題のあの機械だよ。」

Sは答えた。

「だめじゃないですか博士、勝手に持ち出したりしたら犯罪ですよ。」

助手はそう少し心配そうに言ったが

「なーに、ちょこっと調べたらすぐに戻すさ。安心したまえ。」

Sはそう言って機械を研究室に持ち込んだ。助手も面白そうなので着いてきた。

Sもその機械のことは知っていたが実際に金が出てきたところは見たことがなかっ
た。ためしに自分の持っていたペンを入れてみると確かに金が出てきた。

「これはすごい!この機械をうまく利用すればワシは一夜にして豪邸が立てられるほ
どの金が手に入るかもしれん」

博士はうれしそうに言った。

「凄いですね博士、もし完成したら僕にも譲ってくださいよ。」

助手も目を輝かせて脇から見ていた。

そのときSの胸ポケットから万年筆がぽろっと落ち機械の入り口に入ってしまった。

「しまった。あれは妻の形見なんだ。くそっ」

と思わず万年筆を取ろうとして機械の中に手を入れてしまった。その瞬間Sはものす
ごい力で引っ張られた。 

「うわぁぁ、しっしまった!助けてくれ!」

「は、博士!だめだ力が強すぎる」助手はSを引っ張ったが無駄だった。

Sは機械に取り込まれ出し入れ口から千円札がでてきた。夏目漱石の顔がSの顔に似
ている気がした。



 

[前の殿堂作品][殿堂作品ランダムリンク][次の殿堂作品]


[HOME][小説の部屋][感想掲示板][リンクの小部屋][掲示板]