ショートショートバトル 5KBのゴングショー第68戦勝者

「雨」

SEPt

 その日は雨が酷く、俺は雨やどりをしたのだ。
通学路の途中にある、小さなバスの停留所。
古ぼけて塗料が剥げてしまっている板金が、何とか雨避けをしてくれている。
濡れた髪の毛をかき上げ、ふぅとため息をついた。
何気なく上を見上げると、板金には亀裂が入っている。
そこから、上を向いた俺の頬に、大粒の雫が落ちた。
雫は頬を流れ、ハタハタと足元に落ちていく。
ちっとも止まらなかった。

 ついさっきのコトだ。
俺は、フられた。
ずっと好きだった子に、やっとの思いで告白して…
すぐに返ってきた答えは、俺を苦笑させた。
「そっか、ありがとね。」なんて言っても、心の中はズタボロ。
心が真っ白になるとか言うけど、俺の場合は真っ黒って感じだった。
この重い空気から逃げたくて、ついに出た言葉がこれ。
『急に呼び出してゴメンね。』
そんなコト思ってないけどね。ま、決まり文句かな。
またね、と後ろを振り返った後…何言ってるんだろうって自問した。
情けないヤツと思われたんだろうな、俺。

 何でだろう?仲良かったのに。
この前なんて、一緒にボーリングやったんだぞ?
二人きりじゃなかったけどさ…
でも、すごく楽しかった。笑ってくれた。
それだけじゃない、ずっと前から。
よく一緒にしゃべったし、修学旅行だって…!
あーぁ…顔をあわせるのが怖いや。
ってか、俺って未練がましいよな。
確かに最低だよな。

 …今日は鬱だ。
一日、このテンションで過ごすかな?

 バスが来た。
前の出口から、おばさんが出てきた。
目が合ったので、何となく会釈した。が、無視された。
「おい、乗らないのかい?」
運転手さんの声がした。それに対し、ただ首を振って答えた。

 いつの間にか、涙は止まっていた。
大きくため息をついて、周りを見た。
雨はさらに強さを増していた。
同じように強くなった雨の音が、俺の耳元でザアザアと共鳴していた。
教科書で読んだ『滝のような雨』ってのは、コレのことなんだろうか?
…まぁいいや、と歩き出した。

 歩き出して…ほんの少しして。
本当に滝のようだった雨は、少しだけ弱まってきた。
顔に流れる水滴をぬぐい、ふぅとため息をついた。

 不自然に大きな雨粒が、俺の頭にハタハタと落ちてきた。
上を見上げると、桜の木があった。
さっきの雨のせいか、花がすっかり落ちてしまっていて…もうスカスカだ。
嫌だなぁ、こういう時は…何でも自分の気持ちと重なるんだよな。
見上げている俺の顔に、大きな水滴が落ちた。

 ふと、とある古い曲を思い出した。
皮肉か?と思いながら、鼻歌でメロディを辿った。

雨は冷たいけど 濡れていたいの
想い出も涙も 流すから


 はぁ…彼女ほしいなぁ。


作者のサイト:http://www.hm3.aitai.ne.jp/~kazy/

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