その日は雨が酷く、俺は雨やどりをしたのだ。
通学路の途中にある、小さなバスの停留所。
古ぼけて塗料が剥げてしまっている板金が、何とか雨避けをしてくれている。
濡れた髪の毛をかき上げ、ふぅとため息をついた。
何気なく上を見上げると、板金には亀裂が入っている。
そこから、上を向いた俺の頬に、大粒の雫が落ちた。
雫は頬を流れ、ハタハタと足元に落ちていく。
ちっとも止まらなかった。
ついさっきのコトだ。
俺は、フられた。
ずっと好きだった子に、やっとの思いで告白して…
すぐに返ってきた答えは、俺を苦笑させた。
「そっか、ありがとね。」なんて言っても、心の中はズタボロ。
心が真っ白になるとか言うけど、俺の場合は真っ黒って感じだった。
この重い空気から逃げたくて、ついに出た言葉がこれ。
『急に呼び出してゴメンね。』
そんなコト思ってないけどね。ま、決まり文句かな。
またね、と後ろを振り返った後…何言ってるんだろうって自問した。
情けないヤツと思われたんだろうな、俺。
何でだろう?仲良かったのに。
この前なんて、一緒にボーリングやったんだぞ?
二人きりじゃなかったけどさ…
でも、すごく楽しかった。笑ってくれた。
それだけじゃない、ずっと前から。
よく一緒にしゃべったし、修学旅行だって…!
あーぁ…顔をあわせるのが怖いや。
ってか、俺って未練がましいよな。
確かに最低だよな。
…今日は鬱だ。
一日、このテンションで過ごすかな?
バスが来た。
前の出口から、おばさんが出てきた。
目が合ったので、何となく会釈した。が、無視された。
「おい、乗らないのかい?」
運転手さんの声がした。それに対し、ただ首を振って答えた。
いつの間にか、涙は止まっていた。
大きくため息をついて、周りを見た。
雨はさらに強さを増していた。
同じように強くなった雨の音が、俺の耳元でザアザアと共鳴していた。
教科書で読んだ『滝のような雨』ってのは、コレのことなんだろうか?
…まぁいいや、と歩き出した。
歩き出して…ほんの少しして。
本当に滝のようだった雨は、少しだけ弱まってきた。
顔に流れる水滴をぬぐい、ふぅとため息をついた。
不自然に大きな雨粒が、俺の頭にハタハタと落ちてきた。
上を見上げると、桜の木があった。
さっきの雨のせいか、花がすっかり落ちてしまっていて…もうスカスカだ。
嫌だなぁ、こういう時は…何でも自分の気持ちと重なるんだよな。
見上げている俺の顔に、大きな水滴が落ちた。
ふと、とある古い曲を思い出した。
皮肉か?と思いながら、鼻歌でメロディを辿った。
「
雨は冷たいけど 濡れていたいの
想い出も涙も 流すから
」
はぁ…彼女ほしいなぁ。
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