その日主人は、いつものように狩りへ出掛ける準備をしていた。
狩りの準備と言っても、それは、普通の人の想像を遙かに越えるものであった。
それもそのはずで、この主人、世界でも数本の指に入る大金持ち。
その贅沢ぶりと言ったらすごいもので、狩りの為だけに、島を購入するほどである。
狩りの準備が一通り終わると、広大な屋敷の広大な庭から何機ものヘリコプターが、
島に向けて飛び立った。
「今日は熊を狩ることにするか・・・」
主人がそう言うと、ヘリコプターに積んである機械にスイッチが入り、そして、すぐ
に熊の位置が画面に映る。
それほど時間が経たないうちに目的地に着くことができた。
早速、銃を片手に持った主人が狩りを始める。
慣れたものである。
もちろん、襲われないように、主人の周りにはボディーガードが何十人も居るのは、
言うまでもないだろう。
見事に熊を仕留めた主人は、満足げに言った。
「今日の熊は、いつも通り剥製(はくせい)にしてくれ。そして、玄関に置く事にし
よう」
「はい、かしこまりました」
執事が深く頭を下げながら答えた。
屋敷に着いた主人達は、疲れた様子もなく狩りの話しに花を咲かせていた。
主人が言う。
「今日の熊は特に気に入ったぞ。剥製になるのが楽しみだ」
「ご主人様は本当に、狩りがお好きでございますね。剥製のほうもかなりの数になっ
ております」
「まあ、屋敷は広いんだ。そんな心配はするな」
「それにしても、こんなに夢中になれるものがあるのは、とてもうらやましいかぎり
です」
「剥製は生きている時の躍動感、美しさすべて半永久的に残る。そして、剥製を見る
たびに、その時の状況が目に浮かんでくる。何時間見ていても飽きない」
「さようでございますか。躍動感、美しさ、そして思い出までが半永久的に残るわけ
ですね」
執事がそう言うと、主人は笑いながら続けて言った。
「その通りだ、そのうち美しい私の娘も・・・・・」
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