ショートショートバトル 5KBのゴングショー第51戦勝者

「都会の人々」

ryou

「ね〜、行こうよ!」
僕は父を、強引に外に連れ出した。父は、1年前に兄さんが仕事を受け継いでから、
人が変わったようにボケてしまった。一般のボケ現象が始まったらしい。
そんな父を、今日は美術館に連れていくことになったのだった。
外に出ると、舗装された道をブゥゥゥン〜と、トラックが廃棄ガスをふりまきながら
走っていた。
辺りは、真っ黒いガスでいっぱいになった。
「まったく……。」
父はそう言いながら、僕と美術館へ歩きはじめた。
父は、いわゆる‘都会,が嫌いなみたいだった。冷たい人々が集まる所と言って、あ
まり外には出ようとしなかった。

コンビニが、何軒もある道を父と2人で歩いていると、ゴミ捨て場に差し掛かった。
ゴミ捨て場は、‘都会らしく,汚かった。今日は、燃えるゴミの日なので新聞紙と
か、紙くずが散乱していた。
そこを通る人達は、無視しながらそのまま行ってしまうか、わざと違う道に曲がって
しまったりしてゴミ捨て場は、さらに汚くなっていった。
「なんてこった……。」
父が言った。父は、その場を動こうととしなかった。
っとそこに、耳にピアスをして、髪の毛を染めている、いかにも不良という青年が通
りかかった。
ヤパイ……と、思った。この状態じゃ、絶対、父は怒る。きっと、あの人も紙くずを
けったりして、そのまま行ってしまうだろう。
「チェッ。」
と、その人が言った。その後、なんとその人はゴミを拾いはじめた。回りの目線を、
気にもせず、ゴミを拾い始めたのだった。僕は、驚きのあまり、父と一緒にその場に
呆然と立っていた。
ふと父を見ると、父は拾っている人と一緒にゴミを拾い始めたのだった。
すぐに、僕も2人と一緒にゴミを拾い始めた。
2分ぐらいたってから、30歳ぐらいのサラリーマンふうの男の人が、ちりとりを
持って
「これ、使ってください。」
と言って、僕に渡すとその人もゴミを拾いはじめた。どうやら、近くのコンビニでそ
れを買ったらしい。
ゴミを拾う人は、次々に増えていった。ゴミはね10分もしないうちに、綺麗にゴミ
捨て場に整理された。
その場にいた人は、なにもなかったかのように、どこかへ行ってしまった。
「行こう。」
父がそう言ったので、僕は美術館へ歩きはじめた。
少したってから、父が言った。
「都会の人達も、捨てたもんじゃないな。」
その言葉を聞いて、いつもは寂しげな都会が今朝はとっても明るく見えたのだった。

[前の殿堂作品][殿堂作品ランダムリンク][次の殿堂作品]


[HOME][小説の部屋][感想掲示板][リンクの小部屋][掲示板]