ショートショートバトル 5KBのゴングショー第49戦勝者

「心の旅」

ryou

何ヶ月か前。
僕は大学の受験に失敗してしまった。
はっきり言って、かなりショックだった。
あの時点で、僕の人生は真っ暗になってしまった。
やる事もなく、毎日この公園に来ている。ようするに浪人生だ。
鮮やかな青空が広がる中、僕はベンチに座っていた。

「おい。剛(つよし)、隣いいか?」
ドサッと強引に、親父は座った。どうやら、つけて来たらしい。ヤラれたと思ったけ
ど、仕方ないか。
「なんだよ、親父。」
「別に。毎日、お前、どこ行っているのかな〜と思ってさ。」
言いたいことは、もう解っていた。おきまりの、励ましってやつだ。もう慣れている
けど、最初っからくさい芝居は嫌だったので、ストレートに答えた。
「母さんに頼まれたんでしょう?」
「ああ。そんなところだ。」
親父はポケットから、タバコを取り出すと火をつけてタバコを吸い始めた。
「いい天気だよな〜。」
「ねー。なんか、叱らないの?」
プハァと、大きなわっかを煙で作るとトントンと、灰を落とした。
「叱る訳ないだろう。」
はぁ〜と、ため息をつくと僕は言った。
「親父〜。俺、こんなに人生、ムダ遣いしてるんだぜ? 怒んないのかよ?」
「なに、言ってるんだよ。いまさら。」
親父は、少し変わっていた。どことなく、ボケている。一般のおやじ化現象が始まっ
ているらしい。
まったく、親子そろって落ちこぼれだ。


太陽の光が、ポカポカ照りつけていてとっても心地良かった。
やっぱり公園はいい。
5分ぐらいだろうか、おやじがタバコを捨てて足でパタパタ踏んで言った。
「なぁ。剛〜。こうやって人生をムダ遣いするのも、素晴らしい事じゃないか……」
ついついその言葉に、僕はフッと笑ってしまったのだった。

                                完

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