「よし。昼飯はここで食おう」
父さんが指差したのは最近、オープンした「とんこつラーメン」という店だった。
僕は、お寿司の気分だったけどしかたなく、OKした。
父さんと母さんは、2ヶ月前に離婚した。 僕はいちおう母さんのとこにいるけど、たまに父さんと会ってお昼ご飯を一緒に食べていた。 もちろん、母さんには秘密だ。
今日がその日だった。 とってもいい天気で、とっても爽快な天気だった。
店にはいると、店員さんが「いらっしゃいませ〜」っと言ってせっせと、テーブルまで案内してくれた。
イスに座ると、父さんはメニューを見ながらタバコを吸い始めたので僕は
「やめなよ。 母さんが言ってたよ。タバコはよくないって。」
「気にすんな。お前もいつかタバコがおいしくなる日がくるさ。」
しかたなく、僕は灰皿を父さんのほうへ渡した。
父さんが、離婚した理由にタバコがあった。 母さんはタバコ嫌いでよくそれで、もめていた。
でも、そんなに仲が悪かった訳じゃない。 けっこうそれでも2人はいい感じだったし、僕もそんな2人はいいな〜と思っていた。
「なににするんだ?」
父さんが、太い声で尋ねた。
「う〜ん。ラーメンじゃなくて、この焼肉定食がいいな。」
「父さんもだよ。なんか、中華丼がいい。」
少し、メニュー全体を見てから
「よし。焼肉定食と中華丼と生ビールと……、お前、なににする?」
「父さん、やめなよ。ビールなんて。」
「いいんだよ。 お前は、コーラね。」
店員さんは、オーダーを確認するとせっせとほかの所へ行ってしまった。
少したって
「でもさ。ラーメンのお店で、中華丼なんて。変だよね。」
僕は尋ねた。
少したってから、父さんが
「人生、そんなもんさぁ。」
その言葉に僕は、父さんを一瞬、尊敬してしまったのだった。
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