ショートショートバトル 5KBのゴングショー第260戦勝者

「トリコロールクリスマス」

シナリオライター匿名

BGMはフランクシナトラの「ホワイトクリスマス」

空から雪が降ってくる。
「あ、雪」
「今夜はホワイトクリスマスだね」
カップルは空を見て、そして見つめ合う。

19:30。
とあるカウンセリングルーム。
平日なので通常通り20時まで受付時間だ。
カウンセリングルームには30代前半のイケメンカウンセラーと20代後半とおぼしき女性がいる。
「先生・・・」
「はい?」
「私、結婚するんです」
「それはそれは」
「でも・・・したくないんです」
カウンセラーは目の前の見目麗しい女性の深刻な表情を見ながら、マリッジブルーか、よくある奴だな、あれを処方しとけばいいか・・・。
「結婚が決まったけど、結婚はしたくない。なるほど」
「いえ、結婚は今日なんです」
「今日、ですか・・・でも、もう・・・」
「そうです。式は終わっています」
「結婚式は済んだけれども、納得のいかない相手だと・・・」
「いえ、式はボイコットしました」
「なるほど・・・。では、彼との結婚は取りやめにしたいと・・・」
「そうでは・・・ないんです」
「なるほど、そういうわけでは、ないんですね」
彼女は彼の顔をじっと見つめながら
「彼、カウンセラーなんです」
と言って顔を伏せた。
カウンセラーは彼女の真意を測りかねるような視線を彼女の顔に注ぐ。彼女はうつむいているので、それには気づかない。
「結婚したくないのは、彼がカウンセラーだからなのですか?」
「そうです」
「なるほど・・・」
「先生は、私の言っていることをすべて肯定します」
そうだろうか? 彼は思う。
「結局、カウンセラーって相手をすべて受け入れてしまうんです」
いや、そんなことは・・・。
「ということは、彼も、どこかの女に、こういう風に優しくしてるということです」
いやいや、それは仕事だから・・・。
彼女が膝の上のケリーバッグから大きなはさみを取り出した。
あ、と彼が思うまもなく、それは彼の頸動脈に突き立てられた。
血しぶきを浴びた彼女の白いワンピースは真っ赤に染まった。
倒れた彼に、彼女はバッグから取り出した出刃包丁をなんどもなんども突き立てる。
喉を斬られた彼は叫び声をあげようとしても、それは声にすらならない。
彼は自らの流した血の海に完全に沈没した。
彼女は放心したまま、足下のカウンセラーを見つめている。
クリニックのあるビルのフロアから赤い血が流れ出す。その流れは街に降り積もった白い雪を真っ赤に染め上げていく。
新雪を深紅に染める赤い血。
都内にあるクリニックで同時多発的に同じケースが発生していた。
都内を白く染めた新雪を真っ赤に染めるカウンセラーの血潮。
その上にまだ雪はしんしんと振り積む。
景色は徐々にモノクロ・・・いや、黒ではなく濃紺と白のツートンカラーになり、白い雪に濃紺のシミがどんどん広がっていく。

BGMはフランキー・ゴーズ・ハリウッドの「リラックス」

エンドロール

バックは黒ではなく濃紺。


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