ショートショートバトル 5KBのゴングショー第257戦勝者

「レミ」

カカオマスと白馬

 人頭馬酒を飲みながらチョコレートを食べつつ「あんなカレーになんか負けないわ」を読む。
 試験勉強に身が入らないと、こうして本を手にとってしまう。
 テレビゲームやパソコン、ましてや携帯で電話なんかしてればすぐに親にばれてしまうけど、本は勉強をしている振りには最適だ。
 人頭馬酒は友人が小瓶をくれた。チョコレートは自前だ。本は学校の図書館には読みたいのがなかったので市立図書館で借りた。
 小説の中には、途中、主人公が読んでいる小説が作中作として出てくる。
 白馬酒を飲みながら「世界の終わり」を、やはりチョコレートを食べつつ読むシーンがその中にある。
 白馬酒というのが、どういう種類のお酒なのかは、一切説明がない。だから、きっと同じ馬系のお酒なので、今飲んでいるのに似ているのだろう、と思いつつ、作中作のヒロインが一杯飲み干す度に、一口瓶から直接飲む。
 チョコはヒロインよりも多く食べたかもしれない。
 「世界の終わり」についても白馬酒と同じく、説明が略されている。きっと、この小説の世界では、どちらもありふれたものなのだろう。
 「あんなカレーになんか負けないわ」という小説は、タイトルの通り、初めての彼にカレーを作ってあげる乙女が主人公の、ちょっと人頭馬酒やこのビターな大人の味のチョコには不釣り合いの話なのだけれども、作中作が面白いから、と友人に言われて借りてみたのだ。
 確かに、本編よりも作中作の方が面白い。それにそれを読んでいるときの主人公の描写が、なんというか、昔の自分のように思えて、むず痒いような、そんな感じを受ける。
 カレーどうこうという件は、どこかの少女マンガからパクってきたような話で、あまりいただけないけど、友人の言うように、作中作は面白かった。
 でも、この作中作、こっちもパクリなんじゃないだろうか。そんな考えが浮かんで、結局、その日は本を読み終わっても寝付けなくて、気がつくと朝日がカーテンの間から差し込んでいた。

 翌朝、友人を見かけたので
「おはよう、あの本面白かったよ」
と言うと彼女は
「全部読んじゃったの?」
「え、うん」
「そうなんだ・・・」
 なぜか不可解なリアクション。
 その後、試験が終わるとその友人は転校していってしまった。
 その後、試験勉強の息抜きにお酒を飲んだりチョコを食べたりすることはなくなった。
 代わりにマンガを読むようになったのだけど、すぐに読み終わってしまうので、結果、自分でノートに書くようになってしまい、以前よりも一段と成績が降下したのだった。

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