ショートショートバトル 5KBのゴングショー第250戦勝者

「生きているか、関? 」

whoswho

友人に関という男がいた。
過去形なのは、別に死んだとか、そういうわけじゃない。
単に、今は友人ではないと言うハナシだ。
すぐに「死ぬ」というのが口癖の男だった。
「氏ね」とすぐ言うのが癖の後輩たちに囲まれて最近暮らしているので、関の「死ぬ」という台詞がなんだか懐かしい。
関とボクと佐倉井。たまに+α。そんなメンバーで学生時代はつるんで町を目的もなく中古のカローラで流していた。
BGMは「カローラ2に乗って」、だったと思う。
どんな曲かだって?
カラオケに今でもあるので、今度、探してみて欲しい。
いや、タイトルが正確じゃないかもしれないので、スマートフォンででも検索してからの方がいいかもしれない。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
中古のカローラで金のなさそうな男三、四人で町をぐるぐる回るというのは、時間とガソリンの浪費以外のなにものでもない。
地方都市には東京のように車があふれてはいないので、渋滞はないが、循環道路が整備されているわけでもない。だからすぐに飽きてしまう。
アクセルを目一杯ベタ踏みしたい衝動に駆られたりもしたが、暴走するにも中古のカローラじゃカッコがつかない。
それである日、ボクと佐倉井と、その日のスペシャルゲスト(名前は失念した)は、カローラに改造手術を施すことにした。
といっても、金がないので、ホームセンターで買ってきたペンキで適当にボディを塗り直しただけだ。
でも、今までペンキなんて塗ったことなんかないので、こんなにラリルレホーなものだとは思わなかった。
言い忘れたが、関の借りていた町外れの一軒家のガレージの中で、ボクらはその作業をしていたのだ。
ラリってしまって、面倒になったボクらは残りのペンキを、尾崎豊よろしく、車に向かってぶっかけて、そのままそこを後にした。
関は、帰省していて、その場にはいなかった。
車の鍵を彼が置いていってくれたら、あんなことにはならなかったかもしれない。

数日後、関が帰ってきて、車の惨状を目の当たりにした。

それで、彼は「死ぬ」とも言わずにガス自殺を図った。
たまたま、新聞配達の人が気がついて、鍵の掛かっていないドアを開けて中に入って、窓を全開に・・・まぁ、ここら辺はテレビのドラマのシーンからの想像なので、割愛する。

で、ボクと佐倉井は病院に急行した。
なんでも遺書らしきものの横に、ボクと佐倉井の部屋の電話番号が書かれたメモが添えられていたのだそうだ。
言い忘れたが、ボクと佐倉井はその当時ルームシェアというか同居していた。しかし別にやおいとかBLな関係ではない。
病室に入ると、関はベッドに目を閉じたまま静かに横たわっていた。
「生きてるか、関?」
こんな状況でも、そんな軽口を叩ける佐倉井に、ボクはその時、心底感服した。
関は、閉じていた目をかっと見開き、
「 XX 万」
と慰謝料を開口一番に請求したのだ。
で、ボクと佐倉井は、病室を追い出されるほどの激しい口論の末、関に屈し、金をヤツに払った。

それで彼は過去形の友人になった。
それだけのハナシだ。
なにか教訓が欲しい?
そうだな・・・こんな文章に教訓を求める、その姿勢を正すことから初めて見るといいかもしれない。

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