クリスマスなんか、大嫌いだ。
幼い頃、サンタクロースを本当に信じていた俺は、その事を友人に話したら、バカにされて、いじめられた事があった。
幼い頃に両親が離婚したせいもあって、クリスマスイブの夜、1人で過ごした記憶しかない。
17年生きてきた俺にとって、クリスマスは厄日でしかないんだ。
今頃友達は、彼女と過ごしているだろう。
2ヶ月以上も前からバイトして貯めたお金で、点数稼ぎに指輪でも贈っているのだろう。
別に彼女とかを否定する訳じゃない。
俺にも1ヶ月前までは居たから。
すごく好きなコだった。
別れた理由は、カンタン。
ある日、デートの時に彼女が言った。
「今年のクリスマスは、ずっと一緒に居ようね」
「別にクリスマスじゃなくても、一緒に居られるじゃん。どうして、女ってそんなにクリスマスにこだわるの? クリスマスってそんなに特別なものか?」
俺がそう言ったら、彼女は怒ってしまった。
仲直りをしようとしたら、彼女を狙っている男が現れて、まんまと横取りされてしまったのだ。
彼女は、クリスマスを一緒に過ごしてくれる男を選んだんだ。
どうして、女ってクリスマスが好きなんだろうか。
いや、1人になりたくないから、誰でもいいから、とりあえず男と過ごそうとしているのだろうか。
高価なものを買ってくれる、自分だけのサンタクロースが欲しいだけに思えてくる。
女にとって、男ってそーゆーものなんだろうな、きっと・・・。
ボーッと考えている今は、クリスマスイブの夕方の駅前。
イチャイチャするなら、人の居ない所でやれよ、あのカップル。
あーあ。そんなに走ると、ケーキが崩れるよ、オジサン。
サンタじゃなくて、親に買ってもらったおもちゃを嬉しそうに持っているあの子供・・・。
この駅前にも、いろんな人が居る。
それなりにオシャレをしているおねーさん達。
似合わないスーツを着て待ち合わせに遅れてくるおにーさん達。
神様、お願いだよ・・・。
今すぐ、クリスマスをこの世から無くしてくれよ。
俺をクリスマスのない国へ連れてってくれよ・・・。
そう願いを込めて、俺は空を見上げている。
駅前は明るいせいで、星なんて見えやしない。
クリスマスって、そもそもキリスト誕生日だろ?
なんでキリスト教徒でもないのに、騒ぐんだよ。
俺がこんなにクリスマスが嫌いなのはきっと、純粋だったあの頃にいろいろあったからなんだ。
わかっているけど、心の傷は深いし。
いろんな出来事を忘れるくらいいい事があれば、クリスマスが好きになれるだろうけど・・・。
心の傷を癒してくれるものってなんだろう・・・?
もう、かれこれ1時間は此処に居るかもしれない・・・。
(なんでこんな所にいるんだろう、俺は・・・)
カツカツカツ。
誰かがこっちに向かって歩いて来ているみたいだ。
「はい、コレ・・・」
おねーさんは、俺の前に立つと、目の前にプレゼントを差し出した。俺は、訳がわからなくて、でも何となく受け取らなくちゃいけないような気がして、そのプレゼントに手を伸ばしてしまった。
「メリークリスマス♪」
そのおねーさんは笑顔でそう言うと、友達の所に歩いて向かって行く。
「あっ・・・! おねーさん!」
俺は、我に返っておねーさんを呼び止めようとした。だけど、そのおねーさんは俺の声を無視して、友達と何処かに行ってしまった。
最近は、女のサンタクロースなんかいるんだ・・・。
もちろん、そんな事はないけど、さ。
でも、何となくクリスマスが少しは嫌いじゃなくなったような気がした。
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