ショートショートバトル 5KBのゴングショー第237戦勝者

「Cカップ」

南大門48

「シーザーちゃん、なんで食べないの」
 飼い主がそう声をかけても、その大型犬はぶすっとしたままだった。
 飼い主は諦めて、郵便物を投函しに家の外に出た。
 シーザーちゃん、最近、全然ご飯を食べないわ。食べてくれないと困るのに。シーザーちゃんが死んだらとっても、わたし困る。ああ、どうしたらいいのかしら。
 郵便ポストの前にたどり着いても、彼女もしくは彼の考えはまとまらなかった。
 シーザーは飼い主氏の所有物ではない。持ち主は別にいる。訳あって飼い主氏、以降はKとしよう、が預かることになった犬なのである。
 Kの体よりもはるかに大きいシーザー、以降はCとする、は食欲旺盛で、毎日、KやらMやらTやらMやら、とにかくブランド牛肉を3kgも食べたのだ。
 かつては。
 今は歯が悪くなってしまって、高級牛肉をガブリとやれない。それで自分の名前に似た缶詰入りのペットフードを食している。いや、食べさせようとするが、滅多に食べない。
 もしCが死んだりしたら、Kは非常に困るのだ。なぜなら借財がらみの曰く付き動産なのだ。
 Kは貸したくて貸したわけではない、と今は思っている金を回収する必要が生じているのだが、なんせ相手はGという、いやもしかするとJかもしれない、Ωだったろうか、まぁ、ここは大人の都合でPとしておくのが大人というものなのだろう、大物中の大物なのだ。
 K以外にも恐ろしいほど貸し込んでいるモノがいるという噂も耳にする。本当のところはKにはわからない。実際そうなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
 しかし、確実なのはKが多額の、ここでは大人の都合で金額はXとしておく、金をPに貸したのは間違いない。
 そして、Kはリフォーム資金の分割払いの第三五回目の期日を迎えようとしている。これを払い終えれば、無罪放免。いや、気持ちがすっきりする。
 しかしながら、その金額は些少ではあるが、流動性の低下により、その理由はある業界のトラブルに起因するので、ここでは割愛する、用意することが困難になっている。
 リフォーム資金は、実は証券化されており、場合によると、悪夢のサブプライムローンの二の舞なのだ。
 たかだかK一人の問題だと思う事なかれ。
 このローンはドミノローンと呼ばれるもので、一人が転けると、大縄飛びのように全員が支払い失敗という、恐ろしげな代物なのだ。
 マジですか。そういう声が外野から聞こえる。しかし、そのあなただって逃れることはできないのだ。人ごとと思う事なかれ。全世界を巻き込むサブプライムローンを思い出せ。
 今、Kの資金回収を誰かが助けなければならないのだ。
 と檄文を打っているのは、Pその人だった。
 Pは利払い日に利息込みで借り換えを重ねており、某アイスクリームの31重ねほどの高さにそれをしてしまったのだ。
 世界の終わる音が、聞こえてこないか? 向こうの方から。

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