ショートショートバトル 5KBのゴングショー第234戦勝者
南大門バージョンX2041
ファンキーなナンバーが天井のスピーカーから流れてきた。 目の前のジョッキは半分ほどなくなっている。 こんなにいつの間に。 そんな風に思うのは、飲み過ぎの証拠だ。 わたしは作家のふりをしているサッカリンだ。 最近は使用禁止らしい。 というのは、わたしはタイムマシンでここにきているからだ。 サッカリン。作家+燐。哀れんでくれ。 そういうジョークは、昔はうけたのだが、現代でうけるのだろうか? メロウなナンバーに曲が変わった。 女性ボーカル? いや、天才少年の歌声なのか? と、ト書をいくつも書いては消していた。 サッカリンからゴーストライターに職替えをしたのだ。 この世界ではジョブチェンというらしい。 まだ新しい世界にあまり馴染んでいないので、友人がいない。 それで、ファミレスで仕事をする。 むかしむかし、桃太郎は山にしばかりに、かぐやひめは川に洗濯に、という昔話のアレンジをしてくれ、というのが今回の依頼だ。 報酬は法外。 法律的に問題。 最低賃金以下。 え、そんな・・・。 と意味も分からず、依頼人と交渉ごとを済ませたのは、ついさきほどのことだ。 今は、むかしばなし「桃太郎とかぐやひめ」という某英国劇作家の某有名戯曲をぱくって、もといアレンジしたものをでっちあげ、今はビールをのんでいる。 ビールはビールとして、今もある。 しかし、どういったことかわからないが、この世界では某有名劇作家の名前が年表にない。 それをいいことにこのような暴挙にでたのでアルファオメガガンマー波。 しかし、あの大家が存在しない世界にきたということは、サッカリンでそのまま仕事をしてもよかったのかもしれない。 変に気を回して、余計にややこしいことになってしまったのか? いや、ただ単に、己の中で、元の世界と現世界の差異について、気をつけておけばいいだけのことだ。 といいつつ、キリンビールをお願いします、とオーダーしたら、 「うちにはありません」 と言われ、 「え?」 となってしまい、まずい、気づかれたか?! とあさっての方向を見ながら、 「すみません、朝日はありますか?」 と聞くと 「アサヒですね」 ということで、問題なくビールにありつけたわけである。 どうも、この世界ではビールはアサヒが常識のようだ。 さて、とりあえずビールを飲んで、あとは寝床だが・・・。 それについては、またビールを飲んでから考えよう。 おわり |
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