ショートショートバトル 5KBのゴングショー第232戦勝者

「NPUC」

リアルフォース

軍事基地問題についての新聞記事を読んでいて、ああ、彼の荷物、いつになったら持って行ってくれるのだろう、と一瞬思ったのだけれども、すぐにドアチャイムの音がインターセプトしてしまい、結局、アマゾンから彼宛に届いたAKB48のCDを受け取ってしまった。
受け取りが必要なことからも分かるように、今までの発売されたすべてのCDかと思うほどに大きな梱包だったのだ。
彼に「アマゾン北」とメールする。
打ち間違いなのは分かっている。
でも直す気はない。
彼からは返事は来ない。

部屋にいても気分がクサクサするだけなので、外に出かける。
しかし、出がけに郵便受けを見て絶句する。
カードの督促状が入っていたのだ。
カードがほぼ使えない状況にあるので、出かけてみても気が滅入ること間違いない。
メールで友人に連絡取ろうにも、みんなメールアドレスが変わってしまったのか、返事がない。通話するには予算が足りない。メールし放題分しか口座には残金はない。
だから、彼がさっさと早く出てってくれないか、ということでまた頭の中が一杯になる。

部屋に戻ってテレビをつけると、二時間サスペンスの再放送の時間だった。
面白いのか面白くないのか判断する間もなく、ドアチャイムがまた鳴る。
出てみると、スーツ姿の男が立っていて、
「少しばかりお時間よろしいでしょうか?」
と言うので、暇だったし、結構イケメンでもあったので、「少しなら」と応えた。
彼は玄関の外側に立ったまま、大きなサイズの携帯電話のようなモノをいじって、その画面にいろいろ表示させながら、保険だか株だか、そんなようなものの売り込みを続けている。
彼の熱意よりも外の熱気にやられてしまいそうだったので、
「すみません。お金ないんです」
と言ってみた。
すると「お金はなくても大丈夫です」と彼は意外なことを言った。
「貸してくれるんですか?」
「いいえ」
「じゃあ、何?」
「ここではちょっと・・・」
彼はそう言いながら手元の機械をいじって、
「このお店で詳しいお話をどうでしょうか?」
と言った。
画面には高級レストランが表示されていた。
「お金ないんですよ」
「ええ、分かっています」
「おごってくれるんですか?」
「まぁ、そんなところです」
経費ででも落とすのだろう。彼は正直な人のようだ。
彼は夜の七時頃にまた迎えに来ると言って去っていった。


で、彼と楽しいディナーを終えて戻ってきてみると、彼の荷物が一切なくなっていた。
わたしのものは何一つなくなってはいないのだけど。
結局、その彼とは二度と会うことはなかった。
荷物がなくなったことは彼にメールしたのだけれども、そちらもいまだ返事は、ない。

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