ショートショートバトル 5KBのゴングショー第227戦勝者
国士無双
まぁじゃんをしませんか? そう言われまして、わたしは、なぜ? と思ったのです。 聞けば、朝までするのがマージャンだったはず。 朝の雀の鳴き声が聞こえるまで続ける。 モーニングコーヒーを一緒に飲まないか? と同じ意味だとお母様に教えていただきました。 「あの、よくルールがわかりませんので・・・」 「大丈夫ですよ、簡単です。あなたなら必ずできます」 そう言われても固辞しようとしたのだけれども、そのまま引きずられていってしまった。 ジャンソウという場所は、思った以上にきれいで、まるでホテルのようだった。 「個室なんですね」 「ええ、もちろん」 真ん中に四角い大きなテーブルが置いてあって、それがピンクと黒と銀色の装飾が施されている。 「ルールは?」 「やってるうちにオイオイわかってきますよ」 私はすわらされ、相手は向かいに座ると思ったら、隣に座った。 「さて、始めましょうか」 相手はボタンを押した。二度。なんだか激しくなにかがかき混ぜられる音がして、その後でテーブルに亀裂が入り、そこから石の山が出現した。 「さぁ、こんな風にしてください」 相手のするのを見よう見まねでする。 「これを見てください」 そう言って相手はメニューを渡して、中から好きなのを選べと言う。 「この数字は?」 「ポイントですよ」 「ポイント?」 「まぁ、深く考えずに、メニュー通りに作ってください」 こうして初めてのマージャンが始まった。 一晩目はメニュー作成レシピの理解にほぼ全部を費やしてしまった。 二晩目は、してはいけないことの一覧と、失敗した場合のペナルティーについて。 三日目の夜は、演習を行った。机上演習だ。そこで、基本戦略を覚え、定石とそれのはずしかたなどなど、そういうものを一通り説明してもらった。でも、それは一度には覚えられないほど膨大で、少し嫌になってきた。 「あの、明日はお休みにしませんか?」 「だめです」 相手はきっぱりそう言った。 そして4日目、5日目、6日目が過ぎ、講習は終わった。 7日目の講義をうけに、ジャンソウにいくと、相手は来なくて、朝まで待ったけど誰も来なくて、たしか本番は4人でするものなのに・・・一人も来ないなんて・・・と途方に暮れていると、電話がぴりりりりりりと鳴った。 「あの、今日でお約束の期間が過ぎましたので、清算をお願いいたします」 信じられないほどの請求金額に眩暈を覚え、私は意識を失った。 気がつくと、真っ暗な部屋でテーブルを囲みマージャンをしていた。 他のプレーヤーの顔は見えないけど、一人去り、また一人去り、代わりにはいったものも去り、さすがに疲れてきたのだけれども、どうも負けないと去れないルールらしく、でも負けるにはポイントがゼロ以下にならないといけないのに、今のポイントは勘定できないほどの量で、相手が去るたびに増えてき、どうも死ぬまで続けても、ゼロになりそうになかった。 |
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