ショートショートバトル 5KBのゴングショー第226戦勝者
ぐうきょきぱ?
鷺の話をしよう。 知り合いが、そう言い出したので、またかよ、と内心舌打ちをしたくなったが、知人は怒らせると怖いので、黙って拝聴することとした。 鷺というとりは、白いのが有名だが、青いのも黒いのも赤いのも、もちろん、紫色のだっている。 眉唾物の話だが、黙って聞くしかない。 鷺の好物を知っているかい? さぁ、想像もつきません。 新鮮な魚だよ。 鮮魚ですか? そうだね。 どんな種類になるんですか? 種類は関係ない。新鮮な魚ならいいんだよ。 嘘に違いない。知人は鷺など見たことないのかもしれない。案外、麒麟を日本に伝承した人は、こういう人だったのかもしれない。 鷺は、確かに存在している鳥のはずだ。 しかし、このような嘘の知識を植え付けられると、聞いているほうが純真ならば、簡単にころっと騙されるだろう。 知人の話には意味はない。ただ、話しをしたいだけなのだ。 酒をおごってもらっているので、本人には言えないが、とどのつまり、そういう話だ。 いつもこうなのではない。一緒に飲んでいて、楽しい話をしてくれるときだって、当然ある。 しかし、今夜はそうじゃないほうの日のようだった。 鷺の話の中身は、ひとつも覚えていないが、まぁ、「鷺」が別の単語であっても、変わりはない。 人との会話はすべてそうだ。と酔っ払って話を聞かされている間は、信じ込みそうになっている自分が怖かった。 |
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