ショートショートバトル 5KBのゴングショー第221戦勝者
匿名希望M
週刊誌を買って読むと、そこには自分のことが大々的に書かれていた。 冗談じゃない、一般人のわたしが、こんな風に書かれる理由が分からない。 慌てて駅の売店の週刊誌を買い占めようと思ったが、さっき買ったのが最後の一冊だった。 電車の中で読みすすめるうちに、どうしてここまで克明に調べ上げているのか、と疑問に思わずにいられない内容だった。 周りを見回すと、他の乗客は別の週刊誌を読んでいる。 皆、一様に真剣そのものといった顔でそれを読んでいる。 中には、顔が青ざめているものもいる。 なんだ、みんな自分の記事のっている雑誌を買って読んでいるんだ。 そういうことがわかって、ほっとした。 にやついている奴は、きっとその内容を反すうしているのだろう。 それにしても、いつから個人専用の雑誌が発売されるようになったのだろうか? 日付を見て、驚愕した。 155月3542日だって!!!?? ど、どういうことだ、いったい。 夢でも見ているのかと思ったが、そんなことはありえない。 車窓から見える風景は昨日と変わりない。なのに、雑誌だけがおかしい。 隣の人の雑誌を盗み見ると、やはり日付は・・・。 w39oj9月3js9日????!!!! 一段と謎の日付が、そこにはあった。 頭がおかしくなったか、目がおかしくなったか、とにかく脳関係の機能障害に違いない。 そう思い、次の停車駅で降りて、会社に電話した。 「・・・というわけなんですよ」 「なるほど」 「それで病院に行きたいのですが」 「は?」 「あの、さきほどの話は・・・」 「ちゃんと聞いていた」 「では、病院に・・・」 「なにを馬鹿なことを言っているのかね」 その後、さんざん説教を食らい、次に到着した電車にのって会社に向かった。 遅刻したので、遅延報告書を書くにあたって、日付をどうしようか迷ったので、上司に言うと、 「・・・君は、なんのために雑誌を買ったのかね・・・」 とそれから、また長い小言を聞かされるはめになった。 どうも、知らない間に、そういう個人に最適化された暦になったようだ。 週刊誌はもう滅びるとか言われていたが、今は現代生活の必需品となったわけだ。 おわり |
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