ショートショートバトル 5KBのゴングショー第219戦勝者

「新聞」

NDP XIV

 昔、読むと寿命の縮む新聞、そういうものが出てくるマンガがあった。
 今、読むと世界が刻一刻と破滅に向かうという新聞がある。
 何処に売っているのか? それは誰にも分からない。
 一見、普通の一般紙なのだが、それの中にただ一部だけ存在するという。

 ボクは、喫茶店で毎日、新聞を読む。別に経済や、三面記事が読みたいからではなく、ラテレ欄が見たいからだ。
 そんなのネットで、ケータイで見ればいい。
 そう友人は言う。
 ボクは、新聞紙の中のラテレ欄が好きなのだ。

 今日もバイトの帰りに夕食をとろうと、喫茶店に入る。
 いや、喫茶店でない場合もある。ネットカフェとか。
 読む新聞は決まっていない。あいてる新聞なら、ラテレ欄がすぐに見れる新聞なら、なんでもいい。
 今日、たまたまオフィス街のファストフードに入ったら、新聞が置いてあったので、手にとってみた。
 見慣れない新聞だった。
 ラテレ欄が一面にない。
 でも、他の新聞は、ビジネスマンというか、サラリーマンというか、そういうスーツ姿の人か、OL、いや、ワーキングウーマンというのかな、そういうデキル系の女性が読んでいて、あいていなかった。
 ラテレ欄はどこかな・・・。
 ボクは、その新聞をめくっていく。いくらめくってもラテレ欄がでてこない。
 最後までめくってみてもラテレ欄はなかった。
 ラテレ欄のない新聞って、いったいぜんたい、なんなんだ?
 ボクは不可解な新聞を返そうかと思ったのだけれども、もしかして、これを読んで時間をつぶせば、他の新聞があくかもしれないと思い、読んでみることにした。
 もともとラテレ欄しか読まないので、内容はちんぷんかんぷんだ。
 経済がどうとか、赤字とか、破綻とか、誰が殺されたとか、そういう滅入る内容ばかり。
 スポーツ欄もあったけど、それも興味がないので読むところがない。
 適当にめくったり、それをもどしたりしているうちに、棚に他の新聞が戻ってきた。
 ボクは、すかさずそれと手元のものを交換した。
 すると、すかさずボクの置いたものを手にとる人がいた。
 とても美しい女性だったので、思わず見とれてしまった。
 彼女はちらりとだけボクを見ると、新聞を持って自分の席に向かった。
 彼女が席につくまで見とれていたら、他の人が咳払いをして、ボクに(そこをどけ)と合図した。
 それで我に返ったボクも自分の席に戻った。
 戻ったはいいけど、待ち望んだラテレ欄の内容が頭に入ってこない。
 代わりに、さきほどの変な新聞の見出しが、フラッシュバックしてくる。
 今日のドラマの紹介記事を読んでいるのに、

 XXXが破綻。負債総額・・・というような、悲惨な内容で頭が埋め尽くされてしまう。

 もう、どうしようもなくなってしまったボクは、新聞を元に戻すことも忘れて、店を出た。

 部屋に着くと、雨が降り始め、気がつくと雷雨になっていた。
 手元には、あの「新聞」があった。

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