ショートショートバトル 5KBのゴングショー第200戦勝者

「kaikou」

南大門プロジェクト

 昔、 というところに、男あり。
 その男、竜宮嬢なる女におぼれ、気がつくと、目の前には「請求書」なるものがあり、
「これは、なんぞ」
と問うに、
「せいきゆうしよ」
と応える。
 これは、請求書の話ではない。

 竜宮嬢という女は、見目麗しく、そのほほ笑みは、すべての男をとりこにする。
 いや、するそうだ。
 なんせ、私は会ったことないのであるからにして。
 しかし、噂によると、この男をはじめとして、あまたの男が、溺れ死んだと言う。
 
 ある日、この地にほど近い  国の主が、
「竜宮嬢というものが、おると耳にしたが、それはどのようなものじゃ」
と、お付きのものに問うた。
 聞かれたほうも、困った。
 なぜなら、噂話であって、そのような不確実な話を、主に言おうものなら、あとのことを思えば、決して言えるものではないのである。
 しかし、主は、
「どうした。世の評判では、 であるそうじゃが」

 ” ”とは、主らしからぬ、言いようである。
 お付きのものも、ただならぬものを感じ、
「…竜宮烏城とは、最果ての地にあり、それはそれは恐ろしいものでございます」
「恐ろしい…。ふむ、ふむ、ふむ」
 主は、口髭をなでながら、
「どのようにおそろしいのじゃ」
と問う。
「…それは、それは、恐ろしいとのことでございます」
 これでは、なにが、どのように、どれくらい、恐ろしいのか、まったく不明である。
 書いている私も、隔靴掻痒。
「恐ろしい、恐ろしいでは、わからぬ。…そうだ、そちが一度、確かめてまいれ」
 お付きのものの顔は、群青色になってしまった。
「そ、それは、・・それだけは、勘弁していただけますでしょうか」
「しかし、話がみえないのでは、困るではないか」
 ここで、そのまま主と会話していても、形成不利が極まり、それこそ、溺死しにいくはめになりそうだったので、お付きのものは、
「かしこまりました」
と一言ののち、平身低頭した。

 さて、旅立ちに際して、主が用意してくれたのは、期待以上のもので、というか、そこまで本気なのか、マジで?、と思わず私なら言ってしまうほどのものであった。
 千里をかけても疲れ知らずの黒馬。
 倫国の故事に出てくる、最強の武具。
 そして、財宝の山。

 竜宮烏城のある場所すらわからないのに、このような装備で旅立てとは、主は気が触れたのであろうか?
 そう思いつつも、これ持ち逃げしたら…とも思わないでもない、お付きのものであった。
 
 出立の朝。
 御自ら、お見送りと言う、前代未聞のありさまに、下々は、これは、世紀の一大事。すわ、大戦か? と顔を白青させたり、目を白黒させたり、中には、顔を真っ赤にして、何事か叫び、そのまま倒れてしまうものもあった。

 竜宮烏城へ向かうものは、それを横目で見つつ、平静を装い、
「では、いって参ります」
「うむ。よろしく頼むぞ」
「ははー」
 竜宮烏城へ向かうものは、深く一礼すると、馬に飛び乗り、旅立った。

 それから三日三晩。
 なにごともなく過ぎていった。
 千里をかける黒馬なので、もう、三千里は駆けたであろうか?
 日に千里なのか、それとも十二時間で千里なのか。
 もし後者である場合、六千里を走り抜けたことになる。
 さすがに、三日三晩、飲まず食わずできたので、竜宮烏城を目指すものも、限界であった。
「止まれ!!」
 馬上のものは、そう叫んだ。
 しかし、馬は止まらない。
「止まれ!!」
 再度、そう命じると、黒馬は
「しかと」
と応えるが止まらない。
 馬が人語を話したことよりも、止まらないことのほうが、馬上のものには、問題であった。なんせ、このままでは力尽き、振り落とされそうだったからだ。
「お願いだ。止まってくれ」
「しかと」
 やはり止まらない。
「止まってくれないと、わたしは死んでしまうかもしれぬ」
「しかと」
 止まる気配すらない。
 
 そうこうしているうちに、地の果てにたどりついてしまった。
 地の果てとはどのようなところか。
 誰もいったことのない地であるので、私もわからない。
 しかし、漏れ聞いたところによると、世界の果てと言うのは、果てのようで、果てでない。とのことである。
 果てが果てなき世界なら、果てしないこの世界のどこかに…きっと…。
 と昔はやった歌の文句のようなことを、書いてしまいかけたが、本題に戻ろう。
「ここは…」
 馬上のものは、馬が止まったので、馬から降りたち、あたりを見回してみた。
 目の前には、出立した主の館。
 ただ単に、ぐるっと回ってニャンコノメだっただけである。
「おお、戻ったか」
 主がなぜ、このような早朝に、館の外に一人いるのか?
 それが不思議で、突然声をかけられたことにも、驚くことすら忘れていたお付きのものは、
「は、ただいま、戻りました」
「して、竜宮の件はいかに」
 さすがに即答できぬ問いに、
「そうでございますな…。話せばとても長い話になりまする」
「長いのか。しかし、そちが出立して、まだ十日も経っておらんがの」
「いえいえ、わたしめの、数えましたところ…」
 そう言うお付きのものは、兜を脱いだ。
「?!」
「いかがなされましたか?」
「…いや、そちが、やけに老けて見えるのでの…」
「それは、そうでございましょう」
「うむ、なるほど。確かに長い話になりそうであるな」
 主は、そこで、視線を館の方へやった。
 お付きのものは、
「その前に、湯浴みしとおござります」
「…では、あがったら、話をきかせてもらうぞ」
「では、のちほど」
「うむ」

 というのが、「竜宮」という昔話の一形態であるのですが、これを聞きましたのは、かれこれ、四半世紀ほど前のことでありまして、記憶が最近、定かでないことも、多くなり、どこまで再現できたか、はなはだ自信がございませんが、お目汚しということで、よろしくお願いいたします。

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