ショートショートバトル 5KBのゴングショー第2戦勝者

流がれ隕ちる星々の詩

紅葉

各地で、このニュースは一斉に公表された。

 世界各国の天文台が予測するところによれば、今年の冬は流星の当たり年だという。

 中でも日本においては、獅子座の流星群を超える大規模なものが見られるという。

 それはちょうどオリオン座の位置を射貫くようにして流れるだろうことから、

 なんの芸もなく「オリオン流星群」と名付けられるのだそうだ。

 このニュースは週刊誌などでも大きく取り沙汰されたため、

 天文に興味のあるものだけでなく、広い世代に興味を持たせた。



 ──そして、十一月がやってきた。

 十八日。

 この日であると、天文台は首をかけた。

 それを信じた人々は、カメラやビデオを片手に、

 白い息を吐き出しながら、昏い夜空を見上げている。



「あっ!」

 誰かの声が、空を示した。

 人指し指が追従し、望遠鏡と双眼鏡が続いた。

 夜空と相対するオリオンを貫いて、白金色の箭が走り抜けた。

 シャッターが歓声を上げ続ける。ビデオテープが感極まって唸る。

 一つ、二つ……増える。留まることなく増え続けていく。

 まるで夜空にかかるナイアガラの滝のように。

 誰の目にも、それは神聖なものに映った。

 聖戦に赴く天使の騎行に見えた。

 夜の女神の涙に思えた。

 誰もが息を潜めて、必死にこの奇蹟を感じていた。



「……これで、よかったのかね?」

 流星群を見上げる丘の上に集った八人のうち、一人が問うた。

「ああ。きっと良かったのさ」

 いま一人が頷く。眦には涙が浮かんでいた。

「もうスターウォーズにこだわる時代ではない」

「そうだな、スターライヴを願う時代だ」

 隕ちていくのは、幾千もの軍事衛星。

 散り際を炎で飾りながら。



 それは「ファイアワーク・プロジェクト」と名付けられた、極秘裏の講和条約。

 なればこそ、花火の発祥地ともいえる日本を主体としたのだ。



 しかし人は、宇宙に出てからも戦争を始めるのだろう。

 そう、言葉通りの意味でのスターウォーズを。

「だが……」

 この瞬間、奇蹟の流星群を前に、ほんの一時でも、人々は平和を願ったのだ。

[前の殿堂作品][殿堂作品ランダムリンク][次の殿堂作品]


[HOME][小説の部屋][感想掲示板][リンクの小部屋][掲示板]