ショートショートバトル 5KBのゴングショー第195戦勝者

「サナギ 」

YASURAGI




 破滅。
 破壊。
 破防法。

 かつて、新興宗教が、テロを繰り広げ、この国は、極度の緊張に包まれた。
 その団体は、教祖が死刑となり、消えた。
 しかし、そのようなテロへの恐怖よりも恐ろしい状況に今はなっている。
 団体によるテロなどの暴力。そういうものは、破防法・暴対法などによって、厳しく取り締まられている。
 一〇〇年に一度の大恐慌(なぜか新聞には、決してそう書かれないが)は、そういう組織の活動資金を絶ち、表だった抗争はなりを潜めている。
 今、そこにある危機。
 それは、某国の核でも、地球温暖化でもなく、明日、飯が食えるか、それにつきるのだ。

「・・・腹が減ったな」
「ああ」
「・・・なにか食べるものはあるか?」
「・・・と・・・がある」
「それだけ?」
「そうだ」
 ここは、元々は高級レストランだった場所。経営難で潰れたその建物は、権利関係が複雑に絡み合っている関係で、売却されなかった。
 そこに、最近、数名の男女が住み着いている。
 彼らは、各地からこの大都市に流れ着いてきた者たちで、宿無しだ。
 彼らのような集団は、別に珍しくもなんともない。各地の経済は大打撃を受け、唯一、この大都市だけが、この国で輝いている場所なのだ。炎に集まる虫のように、人々が集まってくるのも、当然である。
 そうは言っても、この大都市も、周辺部から、徐々に、輝きを失っていっているので、集まってきたものたちも、より中心部へ、中心部へと移っていく。
 セレブリティーと呼ばれる人々は、警備の厳重な地区に住んでおり、そこは、二十四時間完全警備が行き届いている。そして、その地区の屋敷では、夜な夜なパーティーが開かれているという噂だ。
「・・・あと何日ぐらい生きられるかな」
「うーん。このまま何も食べないでいたら、そうだな・・・」
 気の滅入る会話も、ないよりはマシだ。何もしゃべらないで床に転がっていると、「死」の世界に身体半分、浸かってしまっているような気になる。
「そういえば、維新というのは、あったけど、革命ってないよな」
「あるだろ、革命」
「ないよ」
「フランス革命とか」
「・・・少女革命とか?」
「そんなの、この国の話じゃないだろ」
「いやぁ、革命とか、あわないんじゃないの、この国じゃ」
「じゃあ、なんで、そんな言葉あるんだよ」
「きっと、昔の人が作った翻訳語だろ」
「使われないのに、なんで死語にならないの?」
「そりゃ、この国以外では、実際、起きてるからだろ、事象として」
「・・・納得いかん」
「納得もなにも、なきゃ、どう言えばいいんだよ、その事象を、さ」
「別に維新でいいじゃないか」
「そうだねー」
「なんで維新って言わないのかね」
「そっちの方が不思議だよね」
「きっと、為政者にとって不都合な真実なんだろ」
 彼らの会話は、久しぶりに盛り上がった。
 気がつくと、朝だった。
「朝日、眩しいな」
「消えちまえばいいのに、あんなの」
「なんでだよ」
「もうすぐ俺たち、死ぬんだぞ。ああいうのってむかつかないか」
「・・・別に」
「死ぬんだから、お天道様の下の方がいいじゃない」
「きっと、俺たち死んでも、セレブとかいう奴らは、あの太陽の下、楽しい人生を送り続けるんだろうよ」
「まぁまぁ、とりあえず飯でも食おう」
「お、今日は・・・か」
「ああ・・・だ」
「先にごちそう食べてしまうの?」
「あとの方がよかった?」
「いや、もう作ってしまったんだからしょうがないじゃん」
 そう言って、彼らは「・・・」を食べた。 
 湯気の立ち上る、その料理は、最近の食事の中では格別だった。
「なんだか、眠くなってきた」
「まぁ、お腹ふくれたからねぇ」
 そして、皆、いつの間にか眠りに落ちていった。

 夜になり、その中の一人だけが、起き上がった。
 その人物は、燃料を皆の寝ている室内に撒くと、ポケットからライターを取り出し、それを着けた。
「やすらかに眠りたまえ」
 そう言い終わると同時に、ライターは手の中から落ち、炎が・・・。

おわり

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