ショートショートバトル 5KBのゴングショー第191戦勝者
すーじーぐれい
子供時代、正義の味方になりたかった。 正義の味方は、毎週、悪い奴らをやっつける。 ボクはいじめられっ子だったので、その悪ものに、いじめっ子を投影していたのかもしれない。 でも、それは昔の話だ。 「おい、なにやってんだよ」 「な、なにって、言われたとおり・・・」 「言われたとおりって、・・・もしかして、お前、ニホンゴワカリマセン、か?」 「え、でも・・・」 恐怖にゆがんだ表情が、私の荒んだ心を、さらに荒ませる。 「でも?」 「いえ、その」 あまりにも予定調和で、荒み具合が、臨界点を超えた。 顔ではなく、腹を殴る。 蛙のような鳴き声。 許しを請う瞳には、涙が浮かんでいる。 それが、ますます、頭に来る。 さらに、一〇発ほど、腹にお見舞いする。 下呂を吐きかけてくるが、そんなものは気にならない。 相手が気を失ったのを見て、 「可哀想な人」 そうボクは呟いて、その場を去った。 歩いているうちに、さっきのヤツの嘔吐物を拭い忘れていたことに気づく。 周りの大人の奇異な者を見る目。 荒む。 きっと、明日もまた、同じことを繰り返すだろう。 |
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