ショートショートバトル 5KBのゴングショー第19戦勝者

「100円景気」

城ヤギ

  あなたは、ニュートリノという言葉を知っていますか?
ニュートリノとは幽子の一つです。
幽子とは原子を構成している物質のことです。
つまり簡単に説明すると我々人間も
多くの幽子によって出来ていると言うことなのです。
その幽子は酸素など目に見えない物まで構成している訳ですから、
当然目に見えないくらい小さく、
それゆえどんな物でも通り抜け、
その速さは光速をはるかに超え、
宇宙を瞬時に移動することが出来るのです。
即ち、これはアインシュタインの相対性理論から言うと過去、
現在、未来を自由に行き来できると言うことなのです。
そんなニュートリノから自由に情報を得ることの出来る人間が
いつの時代にもいるのです。
有名なところを言えばノストラダムス・・、
名前は言えませんが今現在も確かに存在しているのです。
今回はその人物から面白いお話しをお聞きしましたので、
皆様にも紹介したいと思います。
未来のことなのであまり詳しくは申し上げられませんが・・・、
尚登場人物は仮名とさせて頂きます。
 
199X年、日本はバブル崩壊による景気低迷がなおも続き、
就職難・金融不安・高齢化などによる社会不安が今より一層増大して行った。
しかし夜はいつかは明けるのです。
 
 山田 一郎(仮名)はこんなどうしようもない世の中を何とかしたかった。
彼は憂国の志士だった。
しかし彼には何の力もなく、どうすることも出来なかった。
彼にあるのは頭脳とポケットにある100円玉一枚だった。
彼はその頭をフル回転させてアイデアを考えた。
くる日も、くる日も考えた。
そして終に一つのとてつもない構想を考えついた。
 
しかしそのアイデアはあまりにスケールが大き過ぎて
成功する確率は万に一つ、いや兆に一つの可能性もないぐらいだったが、
彼は行動に移した。
 
彼はもっている100円玉をボールペンで黒く塗ったり、
ドブにつけたりして目茶苦茶汚くした。
そしてその汚ない100円玉を封筒に入れ、
手紙を添えて予め調べておいた家のポストに入れて来た。
手紙には『この100円玉はのろわれています。すぐに使ってください。
捨ててはなりません、余計にのろわれます。
すぐに使ってください。
持てば持つほど、あなたに不幸が訪れます』と書いておいた。
 
まるで不幸の手紙のようだが、何通も出せとは書いてないし、
入っている100円を使えば良いだけだから、だれも損はしない。
出した先は、UFOや幽霊などオカルト好きの人の家だった。
するとそいつは予想通り、皆に言い触らし始めた。
あっと言う間にオカルト仲間の間に伝わった。
またその仲間が友達に広めて行き、
町中の子供達の間では知らぬ者はいないといった具合だった。
皆は我先にと汚い100円玉を使い始めた。
すると町から段々汚い100円玉はなくなり周辺の町へと移って行った。
 
そのころには、うわさがうわさを呼び、
とんでもない尾ひれがついて大騒ぎになっていた。
この騒ぎをワイドショーなどがテレビで伝えたため、
一気に全国へ飛び火した。
まず子供達がはまって行った。
汚い100円玉を見つけては使い始めた、
持っているといじめにあったので必死になって使った。
そうして子供達から汚い100円玉が消えたものだから、
必然的にそれは大人達へ行く、
 
すると笑っていた大人達も気味が悪いので、
ジュースやたばこなどにすぐに使って行った。
こうなると日本人と言う者は弱い。
縁起を担ぐ人種で、さらに流行に弱いと来たら、もう駄目だ、
猫もシャクシもはまって行った。
汚い100円玉を見つけてはすぐに使うのである。
そうすると必然的に自動販売機を持つ店や会社には
たくさんの汚い100円玉が集まって行った。
 
すると目ざとい経営者はこれに便乗して
汚い100円玉を大量に民間に流し始めた。
するとこれがまた火に油を注ぐ結果となり、
日本中100円玉で大騒ぎになって行った。
100円玉をきれいにする方法がテレビで話題になったり、
100円玉占いが流行ったり、
100円定期が発売されたりと100円フィーバーが日本を席巻して行った。
100円玉は恐るべきスピードで日本中を回転して行った。
 
そしてようやく沈静化した一年後、
日本の景気は急転回した。
久々の高成長を記録した。
学者などはこぞって100円効果を褒めたたえた。
世界でもこのいきなりの高成長の秘密を知ろうと
サミットの中心議題になったりもした。
ついにはこの100円玉景気を作り出した張本人を
表彰しようと言うことになった。
 
またこれからも景気が良くなるようにと縁起を担ぎ、
新しく100円玉を作り、その表面に顔を入れることになった。
こうして山田 一郎(仮名)は日本初の硬貨人物となった。
しかし皆面白がって、その100円玉を黒く塗りつぶしたので、
彼の顔を知っている者は少ないという。
 
山田 一郎(仮名)とは一体だれなんでしょうか。
これを読んでいる、あなたかも知れないですね・・・。

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