ショートショートバトル 5KBのゴングショー第189戦勝者
南大門
帰ってみると、督促状がてんこもりだった。 督促状。督促嬢なら大歓迎なのだが、督促状では、それほど萌えない。 金は口座にあっただろうか。あ、口座に金がないから督促されているんだった。 当たり前のことが当たり前にできなくなってきている。まぁ、今の世の中、当たり前が通用しなくなってきている感じがしないこともないので、まぁ、なんというか。 金がないので、督促状をごみ箱行きにしようと思った。いや、生き埋めにしようとした。 生き埋め。そうだ。埋めても債務は消えないので、生き埋めだ。でも、時効が来れば、完全犯罪だ。 そうこうしていると、電話がかかってきた。 「 さまのお電話でよろしかったでしょうか?」 可愛らしい声。 「はい、そうですが」 「わたくし の と申します。先日お送りいたしました・・・」 ああ、督促状を生き埋めにしたので、督促嬢から電話が来たのだ。 「・・・ということになっておりますので、よろしくお願いいたします」 「はい、わかりました」 電話は切れた。 さて、督促嬢の電話を無視した場合、督促嬢が、取り立てに来るのだろうか? その夜、隣の部屋の さんに、その話をしてみると、 「馬鹿か、お前は」 と言い出しからはじまる長い、長い説教を聞かされるはめになった。 「でも、督促嬢が来てくれたら、お金払おうかと思ったりするんですよね」 「・・・まぁ、もしもだ。もしも、来たコが、全然タイプじゃなかったら、チェンジとか、絶対お前、言うだろう」 「えー、ボクはプレジデントじゃないので、そういうことは言いませんよ」 「本当か」 「ええ」 安酒を飲みながら、朝までそんな話を続けていたら、さすがに疲れたので、 「もうそろそろ帰ります」 「そうか、気をつけて帰れよ」 隣の部屋に戻るのに、なぜ「気をつけてなのか」、一瞬そういう思いが、頭の隅をよぎったけど、酔いが回り過ぎているので、考えないことにした。 部屋に戻ると、というか、気がつくと、朝だった。 さっき、朝だったはずなのに、起きると、また朝。 まさか二十四時間寝ていたのか? 時計を見ると、そういう感じだ。 ドアをノックする音が。 まさか、督促嬢・・・?! 開けてみて、タイプじゃなかったら、どうしよう? ノックが激しくなる。 激しいタイプなのだろうか。 だんだん興奮してきた。 鼻血が・・・。 ノックの音が止んだ。 鼻血の処理をして、ドアを開けると、新聞が刺さっていたりするところに、紙切れが。 「マッサージ カワイイ子 多数・・・」 というピンクちらしが10枚くらい突っ込んであった。 その束を引き抜いて、一枚一枚めくってみる。 なかなかカワイイこの写真ばかり。 やばい、また鼻血が・・・。 結局、さっきのノックの主が入れていったものか、それとも、寝てる間に入れられたのか、ボクには判断つかなかった。 了 |
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