ショートショートバトル 5KBのゴングショー第180戦勝者

「悪夢」

北斗のマイタケ

 俺は今日も夜勤が終わり、減りに減った腹を満たすために、牛丼屋に向かった。
 牛丼屋への道は、今日も保安灯が切れている。
 『暗い夜道に気をつけよう』
 そんな標語すら読めない暗さ。読めない標語に意味なんてあるのか?
 ……そうか、夜読んでる段階で、もう終わってるということか。ああいうのは昼の明るいうちに読んでおいて、夜はここを避けるのが正解というわけだ。
「ちょっと、いいですか?」
 野太い声がそう俺を呼び止めた。
「はぁ?」
 暗いのでよく見えないが、どうも相手は黒い服を着て、黒い帽子をかぶっているようだ。
「あなたのために祈らせてください」
 やばい! 宗教だ。
 俺は子供の頃、両親がカトリックだったせいで、しつけが厳しく、さんざん小言を言われる、うんざりするような悪夢の時代を過ごしたのだ。それで、宗教、特にキリスト教関係はアウトなのだ。もう一発で3アウトになるくらい。
 相手は俺の頭に右手だか、左手だかをかざした。
 うざい。
 俺はその横をすり抜けようとした。
 すると
「あなたのカルマは、まだリムーブされていません」
「はぁ、カルマ? ザビ家の次男か?」
「ふふふ、あなたのカルマ。もうこのまま放っておいたら、世界が破滅します」
 はぁ? もう、こいつ、宗教とかじゃなく、マジやばい。きっとはやりの大麻とかきめてるに違いない。
 俺は関わって、いきなり「ズブ」とかゴメンだったので、
「カルマは、神社でお祓いしてもらいますから」
と下手に出てやり過ごそうとした。
 すると
「待って、いかないで!」
 はぁ? なんだ、こいつゲイか?
 俺はなんだか尻の穴がかゆくなったので、ダッシュで離脱を試みた。
 俺は自慢じゃないが、インターハイの県大会で三位になったこともある、なかなかの俊足だ。そこいらのオッサンなんか目じゃない。
 もう、ついてこれないだろうというところまでくると、そこはコンビニの前だった。
 なんか、小腹が空いたので店に入ろうとすると、看板に「たまごマン」とある。
 たまごマン? キン肉マンの遠い親戚でもできたんだろうか? まぁ、最近「二世」とか政界・芸能界に限らず流行ってるからなぁ。
 店に入ると、中華まんのコーナーにそれはあった。
 手書きのポップで「たまごマン」とある。
 店員のかわいらしい女性に、「このたまごマンってどんなんですか?」と俺はきいた。
「あ、たまごマンは……」
 俺は耳がおかしくなったのかと思った。
 なぜなら、さっきの暗がりの怪しい宗教家の声だったからだ。
 どうみてもアイドルのようなスイートな顔の女の子なのに、声は野太く、なんだか、暖色をおびた、いや〜な響きなのだ。
「……です。ご主人様」
 え、今、なんて言った。『ご主人様』って言わなかったか?
 女性店員はにこやかに俺を見つめている。その笑顔に瞬殺されそうになりながらも、「待て、見た目はかわいいコだが、正体は、さっきのアレだぞ」と心の声が激しく警告していた。
「あ、すみません。この近くにXXビルってありませんか?」
「XXビル? ……すみません、『ご主人様』、ちょっとわかりかねます」
 やはり『ご主人様』と言っている。俺は速攻でそのコンビニを出た。
 外に出ると、そこは白い通路になっていた。
 通路? なんでコンビニの外が通路なんだ????
 ありえねぇ!!!
 俺はその通路の出口を求めて猛ダッシュした。
 だが、俺はその通路の出口がないような、いや〜な予感に、飲み込まれるような、そんな悪寒を感じていた。

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