ショートショートバトル 5KBのゴングショー第156戦勝者

「被害者A」

たそがれイリー

「泣かれてばかりじゃ、取り調べになりません」
「やっぱり、男が女の取り調べなんて、出来るわけないのよ。デリカシーがないんだから」
 だから、私は男なんて嫌いよ。
 その引きつった唇から痛烈な皮肉を吐き捨て、女刑事は取調室に入った。

「グス、グス…」
 女刑事は目の前で泣く女をしばし見つめた。
 女の割には、なんだか角張った顔。女らしいとは、正直言えない。でも、現実を見ろ。この人は女だ。女刑事は自分に言い聞かせた。女ゆえに、セクハラの被害を受け、取り調べと言ってもデリカシーのない男に接され、人権を奪われている。
 
 それ故に、私がいる。彼女を、救う。
 右手に握るボールペン。女刑事の握力でひび割れそうなほど、華奢なボールペン。
「私はあなたの味方よ。言いにくいこともあるだろうけど、調書を書くわ」
「…はい」
「ごめんね。調書がないと、犯人探しも出来ないの…立件できないのよ…辛いだろうけど、私の質問に、出来る限り答えて頂戴」
「わかりました」
 女刑事は調書の冒頭部分に目を落とし、質問をはじめる。
「どんなことを、されたの?」
「…服を破られたり、中身をのぞかれたり…」
「酷いわね。で、どれくらい続くの、回数ね、回数」
「毎日です。毎朝1回、日課のように…」
「なんて男なの。許せないわ」
「男…いや、女にされることもあります」
「女にも! 信じられない…どうなってるの、この世の中は…性的犯罪の極みだわ」

 女刑事は怒りに体を震わせた。
 許せない。絶対に犯人を検挙する。私が、敵を取る。
「ごめんなさい…私も頭に血が上ってたわ…あなたのお名前、教えてもらってなかった」
「そうですね…私、日めくりカレンダーと言います…」

作者のサイト:http://tasogare.goraikou.com

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