ショートショートバトル 5KBのゴングショー第102戦勝者

「白くて大きな花」

ショーシャンク

何もない丘の上に白くて大きな名前のわからない花とジョーロを持った僕。

また、同じような夢をみた。特に他になにもない。ただ、それだけ。最近同じ夢ばか
り見る。と、いうような事を考えながら時計をみるともう出なければ行けない時間に
なっていた。僕はサッカー部に所属している。はっきりいって、弱小といってよく、
大会に出ては初戦敗退というような部活だった。そんな部活の中でも僕らの学年はど
うしようもないようなかんじだったが、顧問がかわったことによって僕達も変わっ
た。いままでとにかく一生懸命やってきた。
部活が終わった後も陸上部と同じくらい走ったし、戦術やポジションのとりかた、果
ては基礎練までも最初からきちんとやりなおした。そして、何とか練習試合にも勝て
るようになってきた。

そして、試合始まる前、ぼくは目をとじて試合にむけて精神を集中した。すると、ま
た、夢で見たあの白くて大きな花がおもいうかんだ。
不思議だ。この花が思い浮かぶと不思議とおちついてくる。いままでの厳しい練習を
あますことなくコナしてきた自分がうかび、そして「大丈夫だ」といってくれてるよ
うな気がした。

ピーっとホイッスルの音が響き試合が始まった。



試合後、僕は泣かなかった。いや、何も考えられなかった。家に帰って布団に入って
も涙は出てこなかった。「今までの練習って・・・」というようなことが頭に浮かん
ではきえた。もう夢でも見よう。こんな日は早く寝ていい夢がみれるといい。底抜け
に明るい夢がいい。


またあの丘に僕はたってた。手にもちゃんといつものようにジョーロをもってた。で
も、そこにあの名前のわからない花はなかった。ただ、みずたまりがあるだけだっ
た。


僕はそこで目を覚ました.意味がわからなかったが、ただ、むなしいような虚無感だ
けがあった。
部活を引退した今、ぼくは立派な受験生だ。いままで部活一本でやってきただけ、そ
れに対して現実味がましてくるとあせった。
それから僕は勉強にひたすらうちこんだ。あの試合のことを忘れるためにも・・。そ
うだ、サッカーなんて始めからやらなければ良かったんだ。そうしてさえいれば、こ
んなむなしくもなく、あせることもなかったのに。

そうしてまずまずの大学にうかり、僕は卒業を迎えた。あまりいい思いでは作れな
かったが、部活のなかまと盛り上がった後、僕は一人で家に帰ることにした。確かに
そうおもったはずだったのに、不思議と足はグラウンドに向いていた。

茶色の地面に白い石灰で書いたラインと夜にたたずむゴールが見えた。それがみえた
瞬間、涙がでてきた。あの日、試合後からずっとせきとめていた涙がいまになってあ
ふれていた。部活にうちこんだ日々や、そして、あの試合の日の
ことがまざまざとよみがえってきた。
とにかくくやしかった。もっとこうしてさえいれば・・そんなことばかりがよぎっ
た。


その日、また僕は夢を見た。

やはりそこはあの丘だった。ジョーロももってた。しかし、やはり花はなく水溜りが
あるだけだった。うなだれて下をむくと微かに小さい緑色のものが見えた気がした。

それは、新しい芽だった。


いまでもその夢をよくみる。そして、その芽はいつのまにかまた、白くて背の高い花
になっていた。
今では僕にはわかっている。

その花の名前は「信念」




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