ショートショートバトル 5KBのゴングショー第100戦勝者

「異例の事件」

綾川光志

 最近、僕は不眠症に陥っている。
 原因はあいつだ。
 あいつのことを思うと、全然眠れなくなってしまうのだ。
 偶然の出会いだった。
 思わず目が合った。
 僕は最初、なんて可愛いやつなんだろうと、しばらくの間じっと見つめていた。
 そして声をかけた。
 するとあいつ、そっぽを向きやがった。
 そう、あいつは僕を無視したのだ。
 僕は諦めた。
 けれどまたふつふつと思いは膨らんだ。
 あいつに好かれたい。
 ところが毎日そう強く思い続けている間に、心にある変化が起こった。
 あいつのことを憎むようになったのだ。
 こんなにも僕が仲良くなりたい、好かれたいと思っているのに、君は振り向きもせず、僕の気持ちなんてこれっぽっちも理解してくれなかった。
 君はもう僕にとって、ただうるさいだけの邪魔な存在だ。
 殺してやる。
 お前なんか、殺してやる。
 そうだ、お前なんか所詮、僕の気持ちを愚弄し、粋がってる生き物にすぎない。
 殺されて当然だ。
 そして僕は今日の昼間、ついに決行した。
 あいつがあの場所で大人しく休んでいる隙に、その柔らかい体を包丁で一突きしてやったのだ。
 しばらくの間、ひーひー唸っていたが、やがてぱったりと動かなくなってしまった。
 僕はその死体を、用意してあった黒のビニール袋につめて、近所のゴミ捨て場に堂々と捨てた。
 その帰り路、僕はほくそ笑みながら想像した。
 明日の朝刊の見出し記事はこうだ。


 異例の事件。
 十歳の少年が、殺害及び死体遺棄罪に問われている。
 犯行現場は、少年の自宅の屋根裏。
 おびただしい血痕のあとが、事件の凄惨さ、生々しさを物語っているという。
 少年の話によると、「眠れなかったから殺した」とのこと。
 京都府警は、「罪に問えるか分からないが事件を重くみている」とコメントしている。

 
 もうおかしくて堪らない。
 そして記事の最後はこう締めくくられるのだ。


 「なお、被害者はただの鼠である」ってね。


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