★大凶★(3/4)

「ハイ、そうです、娘さんを僕にください」
と、言ったら
「コノヤロー、どの面下げてそんなこと言いやがるんだ。ぶっ殺してやる!!」
と、逆上されそうだし
「いいえ、結婚なんて思っても見ませんでした」
なんて言えば
「コノヤロー、娘をキズモノにして置きながらよくそんなことが言えるな。ぶっ殺してやる!!」
とホントに殺されてしまうかも知れない。いや、実はまだなんですけど……と心の中でつぶやいてみても無駄だろう。
おみくじの大凶は大当たりだった訳だ。宝くじは末等しか当たったことないが、こういうのだけはホント良く当たりやがる。
「ね、どうなの?」
今まで黙っていた弘美があの笑みを浮かべながらそう聞く。
はめられたわけだ。
俺は「おのれ謀ったな」と心でつぶやきつつ
「え? う〜ん……」
とすっとぼけてみた。
すると弘美にケツの肉を思いっきりつねりあげられてしまった。
俺は悲鳴を上げそうになったが、ここで悲鳴を上げようものなら、きっとこの親父さんに「それでも男か。いっちょ気合いを入れてやる。歯を食いしばれ」とか言われて、あのグローブのような手で張り手を食らわされるに違いないと思い、そんなことなら今この痛みをこらえる方がマシと、歯を食いしばって耐えた。
「で、どうなのかね」
親父さんが言う。
「で、どうなんです?」
お袋さんは全身で「もうあなたの気持ちは答えなくても十分、分かってるけど、一応礼儀として言葉に表してね」というようなプレッシャーを与えつつ俺にそう言った。
「お嬢さんを僕にください。お願いします!!」
そう言って俺はソファから降りて床に土下座して親父さんに懇願した。いや、そうするしかなかったんだって、あの状況じゃ。
リングで無敗のチャンピオンがへなちょこ挑戦者にダウンを食らった時のような沈黙が一瞬場を包み、その後お袋さんの歓喜の叫びが響き渡った。
しかしそれで場は収まらなかった。
「顔を上げたまえ、タケシ君」
親父さんの声は先ほどよりも低く太く響いた。
やっぱりどっちに転んでも俺は半殺しにされる運命なのか。
俺はおずおずと立ち上がり親父さんの前に立った。
席から立ち上がった親父さんは俺の肩あたりまでしか背がなかった。しかし眼光鋭く俺にプレッシャーを与えていた。
「一発だけ殴らせてくれんかね。そうしたら私の気も収まる」

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