★大凶★(1/4)

「神様のところは大盛況ね」
「そうだね」
弘美に誘われて、久しぶりに初詣に来た。
不景気だが相変わらず、すごい人出だ。不景気だからこそ神頼みにみんな来てるのかもしれない。
俺は人が多いところは苦手なので、高校を卒業して親元を離れてからは一度も初詣に行った事がなかった。今年は弘美がどうしても行こうと言うのでしぶしぶついて来たのだ。彼女は毎年初詣に行くそうだ。そうじゃないと一年が始まらないらしい。別に彼女は神道を信じているわけじゃない。ただ単に習慣だ。でも二十四年間ずっと続けてきたから、そうじゃないと駄目だと思い込んでいるのだろう。
俺たちはまずお参りを済ませた。ここは縁結びの神様でもあるらしいので、お賽銭は五百五十五円。ご縁がありますようにで五円だから、その百十一倍ならもっと縁が出来るんじゃないかという、いささかこじつけな理由から算出した金額だ。俺は弘美との縁が一層深まりますようにと簡単に祈ったが、彼女は結構長くお祈りしていた。
「長かったね。何をそんなにお願いしていたの」
「ひみつ」
そう言って弘美はいたずらっぽく笑った。何か企んでいる時の弘美の癖だ。
「いいじゃないか、教えてくれたって」
「駄目よ。こういうのは人に言ったら叶わなくなるものなの」
「それって初夢じゃないのか」
「そんな事いいじゃない。おみくじ引きましょう」
うまくはぐらかされてしまった。
赤い袴姿の巫女さんがおみくじを売っている。結構人が並んでいる。
俺は隣に弘美がいるのにもかかわらず、巫女さんに見とれてしまった。あの袴姿がなんともかんともそそるんだよね。今度弘美にもあの格好してもらって……そしてああして、こうして……むふふふふ。
自分の番になっても俺は妄想の世界にどっぷり浸っていた。
「あの、順番が来ましたけど」
巫女さんに声をかけられてもそれが自分にだとはすぐには気がつかなかった。
「何ぼぉっとしてんの」
既に引き終わった弘美はそう言って俺の尻を小突いた。彼女の顔を見ると少しムっとしているようだった。
「い、いや何でもないよ」
そう慌ててごまかしながら俺はおみくじを引いた。
なんたることか大凶だった。正月早々縁起が悪い。
去年だって年初に、居眠り運転したトラックにオカマ掘られて車は全損、足を複雑骨折して三ヶ月入院するわ(治りかけの時にカップラーメンを作りに階下に降りようとして階段を滑り落ちて更に一ヶ月入院が伸びたのだが)、夏には賞味期限切れの牛乳をまだ大丈夫だろうと思って飲んだら食中毒になってまた一週間ほど入院したし、秋には台風で床上浸水(家財保険の台風特約をつけてなかったので保険金が下りなかったし)、冬は冬でスキーに行ったら天候が急に変わって遭難しかけるわでろくなことなかったのに。

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