★着メロ★(3/4)

「愛里たち、もうつきあい始めて一年以上経つじゃない。杏子は半年もしないうちにゴールインだよ」
そう言って愛里は良明の強く腕をつかんだ。
「ねぇどうなの?」
良明は答える代わりに愛里を突き飛ばした。愛里の短くあげた悲鳴が聞こえたが良明は気にもとめずに部屋の明かりを消してベッドに入った。
チャラララ〜チャラララ〜。良明はあの着メロの音で目が覚めた。ナイトテーブルの上の目覚まし時計は三時を示していた。愛里の奴、嫌がらせにこんな時間に電話かけてきやがって。そう思いながら良明はベッドから出て携帯の入っているスーツがあるクローゼットの方に歩き出した。すると何かにつまづいた。寝室の明かりを着けるとそこには愛里が横たわっていた。なんで愛里がこんなところに。そう思いながら再び彼女に近づいた良明は普通じゃないことに気がついた。愛里は死んでいたのだ。あの時突き飛ばした際、打ち所が悪かったのだろう。息をしていない。寝室の暗めの照明の中でも顔に血の気がないのが分かる。
良明は一瞬パニックに陥った。しかしそれはほんの少しの間のことだった。すぐにアウトドアウェアに着替えると上にロングコートを羽織り、愛里の死体を一番大きなスーツケースに無理矢理押し込んでマンションの部屋を出た。細心の注意を払いながら地下駐車場までスーツケースを運んだ。スーツケースを自分のランドクルーザーに積み込み、運転席に乗り込むと県境の山の中に死体を捨てに行った。
足がつきにくいように途中で車を降りて、沈んだ物は二度と浮かび上がってこないという噂の沼まで歩いていった。スーツケースから一度死体を取り出して、サバイバルナイフで衣類をはぎ取り、顔を石で滅茶苦茶に潰し、手足の指の指紋をナイフで削って簡易コンロて真っ黒になるまで焼いた。そうして再び死体をスーツケースに戻すと、沼の真ん中までゴムボートで進んで行った。ハンドドリルで穴を開けておいたスーツケースを投げ込むとゴボゴボという音を立てながら沈んでいった。
すべてが終わって良明が部屋に戻ってきたのはもう八時を回っていた。着替えてシャワーを浴びてコーヒーをいれ飲んだ。事務所に人が出てくる時間を見計らって電話をかける。今日は体調がすぐれないので休ませて欲しいと。そして丁度都合良く燃えないゴミの日であったので、愛里の服や血で汚れたアウトドアウェアを小分けにしてゴミ捨て場に出した。
それだけすると良明はやっと深い眠りにつくことができた。

続き


トップへ戻る オススメの100冊
Copyright© 1991-2005 S.Narumi All Rights Reserved