★着メロ★(2/4)

昼間の愛里からの電話のせいでまた職場の人間につまみにされて飲むことになってしまった。もう以前のような気持ちではなく憂鬱な気分の方がまさっている。それで飲み会は実際よりも長く感じられた。
いつもよりも遅くマンションに着くと部屋の明かりがついていた。ドアを開けると
「遅い〜。もうずっと待ってたんだから」
という愛里の声がした。合い鍵を使って入ったのだ。
良明はそれには答えずキッチンで水をコップについで一気に飲み干した。
「飲んできたの? 遅くなるなら遅くなるって連絡してよ」
良明の後ろに立って愛里はそう言った。
「あのね、杏子が結婚するんだって。杏子知ってるよね。前に話した愛里の親友でデパートに勤めてるコ。杏子ったらひどいのよ。前に話したよね、杏子がお金持ちのボンボンに振られた話。二股どころか四つ股だったっての。でさ、その時杏子って男見る目がないねって話になって、もう当分恋愛なんかしないって言ってたのに、愛里にも知らせずに新しい彼氏作って、それがもう結婚なんだって。杏子に先越されたなぁって感じで……ねぇ聞いてるの、良明?」
良明は愛里が話している間、何も言わずにパジャマに着替え、バスルームで歯を磨いていた。
「ねぇ良明、なんか言ったらどうなのよ。そんなムスッとしちゃってさ」
愛里が良明のパジャマの袖をつかんで引っ張った。良明はそれを強く振りほどいてうがいをした。
「良明〜」
そう言いながら愛里はうがいをする良明の脇腹をくすぐる。その拍子に良明は口の中の水を飲み込んでしまった。
「あ、ごめん、飲んじゃった?」
良明は厳しい目で愛里をにらんだ。しかし愛里はそんなことにはお構いなくまた話し始めた。
「さっきの話の続きだけどね、杏子の相手って良明の会社と違って小さなとこだし、だからたぶんお給料だって少ないと思うんだよね。でもちゃんと式も披露宴もハネムーンだって人並み以上にしてくれるんだよ。一生に一度のことだからだって。いいよねぇ、そう言ってくれる優しい彼氏で」
そう言って愛里は上目遣いで良明を見上げた。しかし良明は無言だった。愛里の横をすり抜けるようにしてバスルームを出ると、良明は寝室に向かった。寝室までついてきた愛里は言った。
「ねぇ良明は結婚とかどう考えてるの?」
愛里の言葉に良明は彼女の顔を凝視した。だが何も良明の口からは言葉は出てこなかった。

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