★レストラン暗黒亭★(1/2)
私は食べ歩きが趣味だ。美味しいものを食べると本当に幸せな気持ちになれる。友達は皆結婚してしまうし、付き合っていた彼氏にも振られたばかりで、一緒に食事に行く相手がいなくなった私はインターネットで食べ歩きに付き合ってくれる人を探した。
友達募集サイトでグルメ友達を募集したら何人からかメッセージが送られてきたが、自分と同じような境遇の絵里を相手に選んだ。年齢も同じだし住んでいるところも近かったし、なにより私と同じように恋人に振られたばかりというのに共感がもてた。
 私たちはお給料が入った次の休みの日に色々なところで食事をした。美味しいものがあると聞けば新宿、渋谷、池袋、六本木、横浜、代官山、荻窪などなどどこにでも行った。料理のジャンルはイタリアン、和食、中華、フレンチ、インド・タイなどのエスニック料理まで何でも食べた。
私は雑誌やTVのグルメ番組からお店を見つけてくることが多かったが、絵里はインターネットで見つけてくるそうだ。必ずしも評判通りの店ばかりではなかったけどハズレの店に当たったときはそのマズさをネタに一杯やるのもまた楽しかった。
絵里と食べ歩きを始めて一年が経った。絵里が先月は旅行に行っていたので二月ぶりの会食だ。そのアフリカ料理を食べている時に絵里が言った。
「なんか変わったもの食べたいと思わない?」
「これだって結構変わってると思うけど」
そう言って私は皿の上のワニの唐揚げを指した。
「でもこれは初めてって訳じゃないし。それはね、変わってるだけじゃなくてすっごく美味しいの」
絵里の口から初めて聞かされた『すっごく美味しい』という言葉に私は一も二もなくその話に乗った。
その店は神戸にあるそうだ。なんでもこの前の旅行の時に見つけてきたと絵里は言っていた。
私たちは四月の会食を中止にして、ゴールデンウィークに一緒に関西に旅行に行って、ついでに神戸のその店に寄ろうと約束した。
待ちに待ったゴールデンウィーク。開園したばかりのUSJや大阪の街はもちろん楽しかったけど、いつでも神戸のお店の事が私の頭の隅にあった。絵里は詳しくは教えてくれなかったけどその料理の話になると本当に幸せそうな顔をするのだ。
そしてついにそのお店に行く時が来た。
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